半谷さんは子供たちから教育を始めましたが、震災から7年で、社会人まで一気通貫で同じ目的に向かった研修が形作られましたね。

半谷:それが、副産物まで生んでいるんですね。昨年8月、高校生、大学生と社会人の研修に参加した人が集まりました。企業や公務員は、研修の時には1枚目の名刺を持って来ますが、この「あすびと福島コミュニティ」は、いわゆる「2枚目の名刺」なんです。要するに、プロボノ(専門を生かした社会活動)的に高校生や大学生と一緒になって、新しい価値を創りあげようというコミュニティーに社会人が官民問わず参加してくれる。これが、社会人研修から生まれた大きな副産物です。人材育成の場が広がります。

東京で開催されたあすびと福島コミュニティには、大学生と社会人が集まった
東京で開催されたあすびと福島コミュニティには、大学生と社会人が集まった

 昨年8月の合宿から生まれたのが、「浪江・花プロジェクト」です。浪江町は南相馬よりも原発に近い場所で、昨年4月に避難指示が解除されたばかりですが、2万人ほど人口がいたのに、480人しか戻っていません。

 この浪江町で、学生たちが社会人有志と一緒になって、花プロジェクトを立ち上げようとしているわけです。この春に本格的に動き出します。メンバーが中心になって、町に花を植えて、手入れに通って、花を絶やさないようにする。そして、住民のみなさんが一緒になって、花を手入れしてくれるようになればいいと思って活動を続けていきます。

 そうすると住民も浪江に訪れる人も、より元気になる。子供たちも地域に愛着が増すだろうし、いわゆる関係人口が増えていきます。それが新しい浪江になっていく最初の一歩になるんじゃないか。そして、これはリーダーの菅野さんの「成長の証」でもあるんですけれども。

「あこがれの連鎖」で人材を育てる

『高校生が伝えるふくしま食べる通信』の初代編集長だった子ですね。

半谷:高校2年生だった菅野さんは郡山出身だけど、大学に入ってから浪江の人たちと交流して愛着が生まれました。だから復興の一助になりたいと。浪江の課題を「自分ごと化」したんですね。

 彼女は人材としての可能性を持っています。例えば、MBAの勉強って、MBAの学校に行けばできるんです。ビジョンでもビジネスモデルでも作れて、マーケティングもブランディングもファイナンスも覚えられる。でも、それは手段なので、「思い」がないと事業って立ち上げられないんです。

 彼女は郡山出身なのに浪江に愛着を持ったわけで、このマインドセットのプロセスが人材育成にとって一番大切なところだと思っているんです。この思いがないと、リーダーって生まれないんです、やっぱり。

 今、多くの大学生や企業人、公務員たちがこのプロジェクトを推進しようとアイデアを出して支えてくれています。どこに花を植えて、手入れをするかという拠点も、もう浪江の地元のみなさんとか、町役場の方とも調整が始まっています。最終的には花の加工品ビジネスを立ち上げて、経済的な価値も作っていきたいという目標もあります。

 これがうまくいくと、「憧れの連鎖」につながっていくと思っているんです。例えば、菅野さんなどが、小さくてもアントレプレナーシップを持って、福島で新しい価値を創り始める。そういう人材が生まれると、子供たちの中から、「自分もそうなろう」という子が必ず出てくると思っているんです。

 例えば大谷翔平投手がヤンキースの田中将大投手にあこがれて成長し、大リーグに行く。その大谷投手に、また子供たちがあこがれるわけですよね。憧れの連鎖が、福島に最終的に人材を輩出し続けるメカニズムとして作れないか。

 だから、小中学生の体験学習から、高校生あすびと塾、大学生はあすびと福島コミュニティで社会人と一緒に育っていく。最終的に、憧れの連鎖が回ります。

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