収益は上がるのでしょうか?

半谷:実は、今期は心配な年でした。初めて赤字になるんではないか、と。でも、なんとか今期も黒字になりそうです。

 ただ、黒字の内容がずいぶん変わってきました。初年度は収入4300万円のほとんどが寄付(4200万円)でした。それに対して、今年は寄付が58万円。一方で、4000万円を超える社会人研修の収入が入って、事業の柱になっています。

 寄付はとてもありがたいことなんですけど、その額が年々下がってくるのは世の常ではあります。この寄付がある間に、社会人研修を拡大できました。人材育成はソーシャルな活動ですが、仕組みはビジネスにしないと継続できません。寄付型から社会人研修型に転換することによって、経済的に持続性のある人材育成が可能になってきました。

 では、2018年度の社会人研修は約束されているかというと、必ずしもそうじゃないんですけれども、企業や団体に価値ある研修を提供していれば、必ず継続できると思っています。

日本の未来を示す

なぜ、研修型に転換できたのでしょうか?

半谷:福島第1原発から20キロ圏は避難指示が続いたわけです。ようやく最近になって、避難指示が解除されてきていますが、なかなか人口が戻ってこない。じゃあ、時間が経てば以前の人口まで戻るかというと、もうかなりの方が移住されてしまった。

 そういう厳しい状況で、企業の中に、「真剣に福島の被災地域に向き合おう」という会社さんたちが出てきて、ここでの研修に意義を見いだしているんです。凸版印刷や三菱商事、NEXCO中日本(中日本高速道路)、富士通などの企業や、国家公務員がここで研修を行っています。今期は44回、約900人の方たちがここに来ました。そして、被災地の社会課題にどう向き合って解決していくか、取り組んだわけです。

あすびと福島の社会人研修(写真:野口勝宏)
あすびと福島の社会人研修(写真:野口勝宏)

 企業が社会的課題を解決して、新しい価値を生み出しシェアする。それの延長線上が、最近言われるようになったSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)という考え方ですから。社会課題が先行してしまった地域を体感し、会社にあるリソースで解決して、自社も発展していくことで社会にも貢献するわけです。

 これが私たちの研修のコンセプトそのものなんですね。ですから20キロ圏の北側にある南相馬は、今5万7000人ぐらいの人口ですが、かつては7万5000人ぐらい人口がいました。ところが、5歳刻みで見ていくと、65歳以上の世代はほとんど大震災前と変わりがない人口がいます。でも、生産年齢人口と、その子供たちが6割とか7割のレベルなんです。

 いいか悪いかじゃなくて、現実として(若い世代が)移住を選んでいる。その結果、高齢化率が20年ほど日本全体よりも先取りした形です。よく言われる「課題先進地域」ですね。これは大きな問題なんですけれども、解決できれば日本の未来を示すことができるという思いもあります。

なるほど。ここで被災地を救える事業を生み出せば、将来にわたって日本や世界で展開できるわけですね。

半谷:そういう意味ではフロンティアなんです。被災地の社会課題を「自分ごと化」した上で、復興事業案を作る。しかも、20年先の日本社会に役立つ事業になっていく。だから、国家公務員の研修も始まったんです。企業の中には、うちに出向で1~2年人材を預けてくれるところも出てきました。

 まさしく、企業にとってみれば未来型の新事業創出、または社員育成という価値があります。我々あすびと福島にとっては小、中、高、大学生の人材育成を継続するための原資を得ることができる。

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