人材育成でも、子供から始めていったわけですね。

半谷:スタートは再生可能エネルギーの体験学習でした。震災から2年後の3月11日に「南相馬ソーラー・アグリパーク」を完成させることができました。

福島県南相馬市に設置した南相馬ソーラー・アグリパーク
福島県南相馬市に設置した南相馬ソーラー・アグリパーク

 この土地は津波で流されたんですが、南相馬市が買い取った土地です。そこで(太陽光発電で)500キロワットを発電し、うち100キロワット分を植物工場に入れて、残りの400キロワット分は固定買取制度で売電する。この販売事業を目的だと見る方もいますが、これは人材育成のための手段です。設備は株式会社で作りましたが、人材育成は一般社団法人「あすびと福島」で行っています。

 まあ、ここは福島県の最初の大型(太陽光)発電所なんですよ。だから、「なぜもっと発電所を作らなかったのか」と聞かれるんですけど、それは目的ではないので。

再エネを教えてきて、福島の子供たちに可能性は感じますか。

半谷:子供たちの中に、全国からの支援をもらった感謝がある一方で、風評被害に代表される福島への「誤解」が悔しいという思いがあるんです。子供たちは、支援をいただいて、「今度は自分が人のためになることがしたい」とか、「生まれ育った福島が誤解されて悔しい。だから地域のために役立ちたい」という気持ちって潜在的にあると思うのですが、どうやって顕在化させるかがカギだと思っているんです。その手段をこの5年、いろいろ工夫しながら、やってきました。

太陽光パネルを使って、子供たちの体験学習を実施する
太陽光パネルを使って、子供たちの体験学習を実施する

 それで、小中学生からスタートしましたが、子供は成長していくので、高校生になったらどんな人材育成をすべきか、大学生にはどうか、そう模索してきました。最終的には福島に新しい価値を創り出す人材になってほしい。志を持って、仕組みを作り実行して、小さくても実績と信頼を得て、そして、謙虚さを忘れない人材を、どんなに時間がかかっても育成していこうと。

 ここで小中学生の(再エネの)体験学習を5年続けてきて、南相馬市の3400人の小中学生のうち、3000人近い子供たちが、うちの体験学習を受けてくれています。

教え方にはどんな特徴があるのでしょうか。

半谷:授業後に必ず発表してもらいます。よく、「考える力」とか「行動する力」って言うんですよ。これは、社会人研修でも言われます。私は小中学生の段階では、発表に躊躇しない力が大切なんじゃないかと思っています。

子供たちは授業の後、必ず発表する
子供たちは授業の後、必ず発表する

 発表したら行動に結び付く可能性が出てくる。ところが、発表ってなかなかハードルが高いんですね。間違ったことを言ったら恥ずかしいとか。実は、大人も発表を躊躇するという場面はたくさんあるわけです。

 躊躇するということは、結果的に考えないで済む。だから行動に結び付かない。なので、発表の場数を踏むことで、考える力、行動する力がどんどん身に付いていくんじゃないか。

高校生が風評被害に立ち向かう

そうして、地域の子供たちが育ってきた。

半谷:5年も経つと、子供たちが高校生になってくるんですよ。この町にも小中学生の時にここを体験した高校生がたくさんいます。では、その高校生たちとどう関係を作っていくのか。我々が努力したら、高校生がどう成長してくれるのか、という段階に入ってきているんですね。

 例えば15年には私が、県立原町高校(南相馬市)の全校生徒に講演させてもらい、その縁で原町高校との交流が始まりました。高校生が行っている「ごみゼロ」を目指す社会活動を我々がサポートしたり、今度は逆に我々の小中学生の体験学習に原町高校の生徒がサポートで来てくれたりしています。

 私たちの社員用の2階建てのシェアハウスがありますが、1階は高校生たちのワーキングスペースになっているんです。そこに高校生たちが来て勉強会をやったり、ごみゼロの作戦会議をやったりしています。

 さらに、私たちは「高校生あすびと塾」を福島市で毎月、開いています。ここに原町高校からも参加しますが、県内の意欲ある高校生たちが集まり、朝10時から午後4時ぐらいまで、かなり充実したワークショップをやるんですよ。

 ここで、『高校生が伝えるふくしま食べる通信』という、風評被害の払拭を目指す活動が始まりました。14年、当時高校2年生だった県立安積高校(郡山市)の菅野(智香)さんが、「大好きな福島が誤解されて悔しい」と。「農作物を作る人の思いを届けたい」。これが彼女の志です。では、手段をどうするか。いろいろみんなで検討した結果、農家さんの思いを発信するのがいいんじゃないか、と。付録として、思いのこもった食材も届ける情報誌ができました。もともと、岩手の高橋博之さんが立ち上げた『食べる通信』シリーズがあったんですね。その高橋さんとも相談して、高校生が編集部をやるという全国初のことを、ぜひ一緒にやろうということになった。これは高校生の成長の場になるんです。今でも季刊で出しています。菅野さんは今、明治大学文学部に進学して2年生になりました。(高校塾出身の)大学1年生も生まれています。

菅野智香さん
菅野智香さん

人材の厚みが増してきたわけですね。

半谷:今、高校3年生は受験ですから、編集部の中心は高校2年生です。また高校1年生から編集部に入部してくる。高校も4校をまたぎ、学年も(大学を含め)5学年にわたる。こういう高校生ネットワークになってきたんです。

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