MDはセンサーとシューターをクロス接続

二つ目に挙げていただいたミサイル防衛(MD:Missile Defense)システムについてうかがいます。これは今後どうあるべきでしょう。

小谷:政府は2017年12月、イージスアショアの導入を決めました。北朝鮮への核・ミサイルへの対応はこれに任せ、現在、哨戒に当たっているイージス艦を南西諸島防衛に振り向けるようにする。

 加えてIAMD*7の整備を進める必要があります。例えば、イージスアショアのレーダーが探知した目標をイージス艦が搭載するミサイル(編集注:各種対空ミサイルを「シューター」と呼ぶ)で迎撃する、といったことが可能になります。

*7:Integrated Air and Missile Defenseの略。弾道ミサイルや巡航ミサイル、航空機の脅威に対して、各種レーダー網と各種の対空ミサイル網をクロスでネットワーク化することで、一元的に対処する仕組み

 レーダーや対空ミサイルといったハードはそろいつつあります。次に、これらをネットワーク化するためCEC(共同交戦能力)というソフトを導入する必要があります。現在建造中の新しいイージス艦には搭載される予定です。今年末から本格運用に入る新しい早期警戒機E2Dにも搭載するよう決定して、中期防に書き込んでほしいと思います。

イージスアショアの代わりに地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を導入すべきだったという議論があります。また、米朝首脳会談で両国首脳が完全な非核化で合意するや否や、「高価なイージスアショアは不要」という議論が起きました。

小谷:イージスアショアとTHAADはそれぞれ特性があり、どちらが優れているという話ではありません。イージスアショアはミッドコース*8を飛行中のICBM(大陸間弾道ミサイル)を迎撃するものです。一方、THAADは落下するターミナルフェーズ*9における高度の高いところでミサイル撃ち落とすことを想定しています。

*8:ロケットエンジンの燃焼が終了した後、宇宙空間を慣性飛行している状態。この後、大気圏へ再突入する
*9:大気圏に再突入してから、着弾するまで

 イージスアショアの方が用途が広い。SM6というミサイルと使用すれば巡航ミサイルや航空機も迎撃対象にできます。一方、THAADは在日米軍が導入すれば、日米で役割分担をして多層化を図ることができます。

CECを導入すると米軍のレーダーや衛星、イージス艦とも情報をやりとりできるのですか。

小谷:技術面では問題なく可能です。ただし導入当初は自衛隊の中でのみ使用することになると思います。

韓国が運用するイージス艦とはつながりますか。

小谷:韓国はミサイル防衛システムを日米のそれとつなげないことを前提としており、CECを導入する予定も今のところはないです。

水陸機動団の第3の連隊は沖縄に

第3に挙げていただいた、水陸機動団の運用についてうかがいます。

小谷:先ほどお話しした、海上自衛隊や航空自衛隊からの支援を適切に受けられるようにすることが一番大きな課題です。

 加えて、3つめの連隊を作ることが中期防に書き込まれると思います。これをどこに置くかが重要です。現行の2つの連隊は長崎県佐世保市の相浦駐屯地を中心にいます。しかし、九州から南西諸島は遠い。3つめの連隊は沖縄本島に置く、と中期防に書いてほしいところです。加えて、キャンプ・シュワブに、米海兵隊と同居すれば抑止力が高まります。もちろん政治的なハードルは高いのですが。

 さらに付け加えるなら、自民党が提案している「多用途運用母艦」を導入するのであれば、これを事実上の強襲揚陸艦として主に水陸機動団の輸送のためと位置づける。F-35Bのプラットフォームとしても使えば、米海兵隊にかなり近い能力を発揮できるのではないかと思います。個人的にはF-35Bの運用を陸自が行うくらい大胆な発想も必要ではないかと思っています。

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