
8人が出馬するロシア大統領選で、最も異色の候補が女性テレビタレントで反プーチンの旗色を鮮明にしているクセニア・サプチャクさん(36)だ。「ロシアのパリス・ヒルトン」の異名を取るゴージャスなテレビ司会者で、奔放かつリベラルな言動、奇抜なスタイルは若者の人気が高い。激しい政権批判を展開するが、裏で政権とつながっているとの疑惑もある。サプチャクさんとプーチン大統領の関係は謎の中の謎だ。
記者会見で激突
「ロシアの地方大学のレベルは低い。ミサイルより、生物科学を重視すべきだ」「クリミアの併合は違法であり、ウクライナに返還すべきだ」「米国の大統領選でロシアがサイバー攻撃したとすれば、謝罪したい」――。
サプチャクさんは選挙演説で、舌鋒鋭くプーチン大統領の世界戦略を全面批判している。紛争地のチェチェン共和国を訪れたり、訪米してワシントンでもプーチン批判を繰り返した。
昨年12月14日、大統領の内外記者会見に飛び入りし、大統領とやりあった。その時のやり取りを再現してみよう。
サプチャク:大統領選について質問したい。ご存知と思うが、私も立候補する予定だ。
プーチン:あなたはこの会見に、皆を騙して大統領候補として参加しているのか。それともどこかのメディアを代表しているのか。
サプチャク:私はテレビ局「ドーシチ(雨)」の代表として来ている。あなたが候補者討論会に参加しないので、この場が唯一質問できる場だ。質問は選挙の競争に関するものだ。ロシアでは政権反対派の人たちは立候補できないばかりか、さまざまな困難をでっち上げられる。ナワリニーの場合も、刑事事件をでっち上げられた。ロシアで政権反対派であることは、殺されるか投獄されるかだ。なぜ政権はまじめな批判派を恐れるのか。
プーチン:あなたが言及した人物については、ウクライナ問題に関して述べたことがある。ロシアでもあちこちの広場でサーカシビリ(元ジョージア大統領)のような輩が走り回るのをあなたは望んでいるのか。あなたはそのような連中がロシアを不安定にするのを望んでいるのか。ロシアでウクライナのような「マイダン革命」が起き、クーデターが発生するのを望んでいるのか。ロシア国民の大半はそれを望んでいない。(拍手)
このやりとりは、4時間近くに及んだ記者会見の最大の見所だった。サプチャクさんはプーチン大統領と決別し、野党候補として政権に対抗する意思を示したからだ。
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