KDDIだけに不利な事情がある

 KDDIは、この2つの戦略のどちらも取りにくかったという事情があります。

 KDDIの通信方式は「CDMA2000」と呼ばれる通信方式で、グローバルに見てドコモやソフトバンクが主に利用している「W-CDMA/GSM」と比べてあまり広く利用されている通信方式ではありません。

 この通信方式の違いが問題になります。

 特に安いAndroid端末で、CDMA2000に対応していない端末が多いのです。MVNOなどの格安回線を販売するには、安い端末が不可欠です。携帯やスマートフォンをそれほど頻繁に利用しない層は、回線だけではなく端末にも大きなお金を払いたがらないからです。

 KDDIはMVNOに対して回線を広く開放しようにも、MVNO側からすると「KDDIに対応する格安端末が少なすぎるので、ドコモのMVNOの方が売りやすい」という話になってしまいます。

 また、ソフトバンクにとってのワイモバイルのように、自社で格安のMVNOを持とうとしても、同じようにスマートフォンの端末費用を抑えたいユーザーにしてみれば「端末のラインアップが魅力に欠ける」という話になってしまいます。

 このように、CDMA2000方式を利用しているがために、KDDIはMVNO、格安スマホにおいて非常に不利な状況にあるのです。

値下げは「MVNO対策」ではない?

キャリア 回線 端末
ドコモ本体
ドコモMVNO 安~中
ソフトバンク本体
ワイモバイル 安~中
KDDI本体 中~高

 今回のKDDIの料金値下げを受けて、携帯電話業界は大雑把に上の表のように整理することができるでしょう。

 つまり、iPhoneなどの高スペックな端末を三大携帯キャリアの回線で利用したいユーザーは、KDDIと契約するのが最もお得になります。これらの高スペック端末はCDMA2000方式にも対応している場合が多いので、今回のKDDIのターゲットはこの層になるのではないでしょうか。

 この戦略は、実に理にかなっている戦略であると思います。というのも、他社のMVNOユーザーを獲得しても、顧客単価は高くないからです。

 一方でドコモやソフトバンク本体と契約しているiPhoneなどの高スペック端末を好んで使うようなユーザーは、1ユーザー当たりの収益性が高い。高単価なユーザーに対して今回の値下げで料金面で訴求していくという方向は、非常に正しい戦略に見えます。