「格安」に対応する2つのオプション

 三大携帯キャリアが格安キャリアに対応するには、2つのオプションがあります。

 1つ目はドコモのように、広くMVNOに携帯回線を解放することです。

 ドコモはもともと国有企業グループだったという歴史的な経緯から、2016年5月までは「電気通信事業法」により「特定の電気通信事業者を不当に優先的な扱いをして利益を与えたり、逆に不当に不利な扱いをして不利益を与えないこと」と定められていて、MVNO事業者から要請があれば必ず回線を提供することになっていました。

 しかし、その規制が緩和されてからも積極的に携帯回線をMVNOに開放しているのは、事業上のメリットがあるからです。

 ドコモ本体のサービスはMVNOに比べれば割高に見えるものの、それでも身近なところにドコモショップがあり、こちらで手厚いサービスを受けられるという優位性があります。

 そしてMVNOに回線を卸すと、回線利用料のみがドコモに支払われますので、「1ユーザー当たりの売上」こそ低くなりますが、「KDDIやソフトバンクへの顧客流出」は抑えることができます。

 このように、ドコモは「お金払いの良いお客さん」を自社で抱えつつ、「コスト重視なお客さん」をMVNOにサポートしてもらうことで、収益性と契約回線数(つまり市場シェア)の両方を維持するという戦略を取っていることになるのです。
 2つ目は、ソフトバンクのようにグループ内で格安キャリアを抱えてしまうことです。

 この場合、ドコモと同じように「お金払いの良いお客さん」をソフトバンク本体で抱えて、「コスト重視なお客さん」をワイモバイルで吸収する形になります。MVNOとして回線を開放するのと比べ、最大のメリットはワイモバイルのユーザーに対してもソフトバンクグループの付加サービスを販売できるという点に尽きます。

 ドコモの場合、MVNOに回線を卸してしまうとドコモの付加サービスを販売することは難しくなるわけですが、ワイモバイルのユーザーに対しては、例えば「ヤフーのプレミアム会員になってもらう」といったような販促ができたりします。

 ソフトバンクは、ワイモバイルのユーザーから通話・通信データのインフラ利用料で稼ぐことをあきらめつつも、付加サービスでの収益をしっかり上げられる形で格安キャリアとして成立させているのです。