本荘:そういう意味では、分析レポートや数字がしっかりしているかどうかは、投資家のリテラシーに左右されるんでしょうね。
数字を組み合わせるのは、ジグソーパズルを作る感覚
シバタ:ところで本荘さんは、若い頃から事業数字を読むのがお得意だったのですか?
本荘:工学部だったので数字自体には慣れていましたけど、ビジネス的な数字は全く。それでBCGに入社したものだから、周りが何を言っているのか分からないんです(笑)。
でも、1年目に有価証券報告書をとにかく読まされて、そこからキャッシュフローを計算するなど、いろいろなお題をもらって数をこなしていくうちに、会社という生き物について理解する力が身に付きました。
シバタ:本荘さんのような方でも、そういう基礎トレーニングによってファイナンス・リテラシーを磨く時期が必要だったのですね。
本荘:しかも有価証券報告書の数字だけでなく、市場調査など他のデータと組み合わせたり、競合他社と比べたりしていると、だんだん見えなかったものが見えてくる。
パズルを組み合わせて、1枚の絵を完成させるイメージというか。日本ではまだ、パズルの1ピースだけを見てあれこれ言っている人が多い気がします。
シバタ:本荘さんは若い起業家との接点も多いですが、数字が得意になる人とそうでない人の違いって何だと思います?
本荘:みんな、やればできるんですよ。ただ、食わず嫌いの人はけっこう多い。「自分には無理」と思い込んでいる人が多いんです。
でも、数字はドリアンみたいに臭いわけじゃないし、全然食えると思うんですよね。
シバタ:その通りですね(笑)。
本荘:エンジニア出身の起業家で、「事業数字が苦手です」って言う若者もいるけれど、決算を読むのはプログラミングよりも簡単ですよ。
今はシバタさんの本のような、良い参考書もありますしね。「数字を組み合わせて戦略を読み解け」と言われても、最初はよく分からないと思います。そんな時は、この本に載っている読み解き方や事例を真似すればいい。
シバタ:1回できるようになると、コツが分かるようになって、次からそんなに苦労なく読めるようになりますよね。
それと、やっぱり自分事に近い数字のほうが、頭に入ってくると思うんですよ。例えば、これからメディアビジネスをやりたいという人ならば、広告ビジネスで押さえておくべき指標や、個人課金ビジネスで重要な指標くらいは最低限知っておいたほうがいい。
本荘:加えて、僕が今の日本で必要だと思うのは、ミドル層のファイナンス・リテラシー強化です。
シバタ:ほう、若手だけでなく、ミドルマネジメント層もですか。
本荘:ミドル層くらいになれば、担当する事業のKPI(重要業績評価指標)や売上など、ある程度の数字は普通に読めるでしょう。
ただ、本来はそれに加えて、競合他社や海外のトップ企業の経営数字から自社の戦略に役立つ知識を見いだす力も必要になります。
その力があれば、適切な事業判断をした上で、経営トップにレコメンデーションできるようになります。ここまでできている人は、あまりいないんじゃないかと。
Powered by リゾーム?