日米のファイナンス・リテラシーの差はどこから来る?

本荘:そうなんですよ。日本では、投資やM&A関連の仕事をしている人でも、こうやってちゃんと数字が読める人が少ないんじゃないかと、僕は危惧しています。

 日本は低成長の会社に慣れているから、すぐEBITDA(※1)マルチプルで買収価格を決めようとします。でも、シバタさんの本で取り上げている会社って、基本的にハイグロースファーム(急成長企業)ばかりじゃないですか。そういう会社の企業価値は、EBITDAマルチプルでは計算できません。

※1...EBITDA:Earnings Before Interest , Taxes ,Depreciation and Amortizationの頭文字。金利や税、有形固定資産の減価償却費、無形固定資産の償却費を引く前の利益を表す。

シバタ:本当は、バリュー投資とグロース投資のバランスを考えないといけないですよね。

本荘:日本は国自体が少子高齢社会で、フラット、もしくはマイナス成長です。そうなると、グロースで見る視点がどうしても欠けてしまう。

シバタ:それに加えて、僕がアメリカにいて思うのは、バンカー(投資銀行家)の層が厚いということです。特にウォールストリートの人材の厚さ。これは日本にないものですよね。

本荘:日本の証券会社にも優秀なアナリストはいると思うんですけど、ちゃんとやらせてもらえていないんじゃないかな。

 アメリカの投資家は見る目が厳しいから、アナリストがへなちょこなレポートを書くとすぐに突っ込みが入ります。だから、おのずとレポートの質も上がるのでしょう。

シバタ:そうなんですよね。アナリシスもそうだし、経済記事もレベルが違うなと思っていて。日本では大衆の求めるレベルに合わせているのかもしれないですが......。

 決算のニュースが経済誌などに出るじゃないですか。それを見ると、一時的な増益・減益をキャッチーな見出しとして使っているのが散見されます。

ファイナンスに関する分析情報に日米で格差がある背景を考察

本荘:そういう目眩ましみたいな記事を読むくらいなら、アメリカの企業のプロスペクタス(※2)を読んだほうが、よっぽど勉強になります。

※2...プロスペクタス:株式などの有価証券の募集、売り出しなどに際して、株式発行会社の事業やその他の事項について説明する目論見書

シバタ:確かに。「こんなに書いていいの?」というくらい、詳細に書いてありますよね。

本荘:そうそう。以前はよく、米ナスダックに上場する前の面白そうな会社を見つけたら、必ずプロスペクタスを読んでいました。

シバタ:日本の目論見書や有価証券報告書とは全然違いますよね。日本でもちゃんとしている会社はありますが、載っているデータが「売上とユーザー数、以上」みたいなところもけっこうあって。

 しかも、ユーザー数もアクティブユーザー数じゃなくて、ダウンロード数だけとか。それだと何も分からなくて、株を買うかどうかの判断ができません。