そもそも「会計が分かる」ことと、「ファイナンスが分かっている」というのは違いますからね。

シバタ:その違いを、もう少し掘り下げて説明していただけますか?

本荘:日本企業でCFO(最高財務責任者)というと、要は経理のトップ、会計屋さんですよね。でも、アメリカの優れた企業では、CFOがCSO(最高戦略責任者)を兼ねていることがよくあります。

 つまり、英語の“Finance”はストラテジーと表裏一体なんですよ。

シバタ:日本で、CFO=経理のトップにとどまってしまう理由はどこにあるのでしょう?

本荘:ビジネススクールなどで、商学部の先生、会計を専門とする人が一番偉いとされていることにもつながるかもしれません。

シバタ:なるほど。僕の前職である楽天は、攻めのM&A戦略など、本荘さんのおっしゃる「ファイナンス」を上手に使っている会社の一つだと思います。ソフトバンクもそうですね。でも、楽天やソフトバンクのような会社は、日本だとまだまだ少ない。

本荘:その点、米国企業はファイナンスで会社を成長させるのが当たり前という感覚がありますよね、分かります。

 これは少し前の例になるのですが、僕は2006年に出した博士論文で、米シスコシステムズを取り上げたんです。シスコは、テクノロジー企業をいくつも買収して成長してました。そこに着目していろいろ調べてみると、シスコにはCDO(チーフ・デベロップメント・オフィサー)という役職に就いている人がいたんですよ。

シバタ:CDOの役割は何なのですか?

本荘:面白いことに、主に企業買収に関するCFO兼CTO(最高技術責任者)だったんです。

シバタ:へぇー、ファイナンスも分かっていて、かつ技術にも精通していると。

本荘:テクノロジーロードマップをひいて、足りない部分を買収する。そのためにはCTO的な視点が必要になります。でも、買収チームとテクノロジーチームが別のトップだと打ち手が遅くなってしまうから、1人に集約したと。

シバタ:それはすごいタレント人材ですね。

本荘:その前、1999年にシスコを研究した書籍『成長を創造する経営』を出しましたが、シスコの買収に関する数字を詳しく見ていたら、面白いことに気付きました。

 買収時の価格付けに、一番影響を与えていた変数は何だと思いますか? ヒントは、当時のシスコは技術やプロダクトを買収していた、ということです。

シバタ:えーと、社員数でしょうか。

本荘:当たり! 分析してみると、人数が効いていたんですよ。会社を買うというより、チームを買っていたんですね。

シバタ:今では「アクハイヤー」といって、優秀な人材を獲得するために買収するのは当たり前になっていますが、1990年代からそれをやっていたのはすごいですね。そして、買収額の分析からそういうことまで分かるというのも面白い。