「信用」がコストを下げ、利益率を上げる

シバタ:CFOがそういう意識でお仕事している会社は、すごく素敵ですね。篠田さん自身がそのような意識に変わったのって、いつ頃からなんですか?

篠田:ほぼ日の前、製薬会社で働いていた頃からですね。その会社は、いわゆる数字主導、KPI(重要業績評価指標)ありきで物事が進む会社でした。

 予算がはっきり数字で出て、それを営業の皆さんに割り振って、各人の営業目標になる。でも、数字に振り回されてしまう営業の方は、ともするとお客さまとの関係や社会的な正しさを少し踏み越えてでも、数字を達成しようとしてしまう。だから、営業目標ということで、数字だけを渡すのは危険だとずっと思っていました。

 また、予算の数字を分析していると、真逆の面白さもあるんですよね。個人の行動から、会社全体の売上まで、すべてが連なっていることが分かる瞬間があって。

 予算と実績のズレを掘り下げていると、「前に○○さんが話していた企画が通ったから、この営業経費の増加につながっているのか」みたいなことまで分かるんですよ。

 後は、会社の信用というのは、ある形で利益率に出てくるな、と私は感じています。

シバタ:面白いですね。信用という目に見えないものが、数字になって表れると?

篠田:ええ。ほぼ日で働いているうちに、この考えは確信に変わりました。

 例えば、弊社からクリエイターの方に仕事を依頼するとします。そうすると、その方がほぼ日のことを知っていて、好きでいてくれたら、すぐに「やります!」と快諾してもらえるんです。

 つまり、OKしていただくまでのコストがかからない。フィーも、長期的にほぼ日と仕事をしたいと思ってもらえたら、法外な要求はされません。

 お客さまとの関係も同じです。ほぼ日のブランドに対する信用があるからこそ、少し高めの価格設定が「これは良いモノだろう」というメッセージになって、買っていただける。そういう利益率とかコストの数字に、信用がすべてつながっているんですよね。

 だから、この信用の源泉となるクリエイターのみんなを、数字で縛り過ぎてはいけない。

事業を「数字で考える」ことと、「数字で管理する」ことの違いを話す2人
事業を「数字で考える」ことと、「数字で管理する」ことの違いを話す2人

シバタ:お話を聞いて、ほぼ日に篠田さんのようなCFOがいるのは、すごく幸運なことだと思いました。本来、CFOは一番数字にうるさい役割の人じゃないですか。その人が、数字以外のこともこんなにちゃんと考えているわけですから。

篠田:他の会社で私みたいなCFOがいいのかどうかは、また別問題なので、向き不向きなのかなと思っています。

 初めて会計をちゃんと勉強したのは、アメリカのビジネススクールで受けた会計の授業でした。そこで、とあるメーカーの年次報告書を取り上げて、細かく分析するということをやったんですね。それがすごく面白くて。

 一方、夫も同じ授業を受けていたんですけど、彼は、全然面白さを見いだしていませんでした(笑)。夫は、後に投資銀行業務をずっとやっていくことになるんですが。

シバタ:会計を見て会社の生々しい実態を理解するというアプローチは、投資銀行業務には向かないかもしれませんね。僕も投資銀行では働ける気がしません。決算書やその他のいろいろな情報を組み合わせて、「この時社長は何を考えていたんだろう」と想像するのが楽しいんです。

篠田:それは、『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』にもすごく表れていますよね。私と趣味嗜好が似ているタイプの方なのかな、と思いながら読んでいました(笑)。

シバタ:篠田さんにそう言っていただけるとは! 今日はお話を伺えて本当によかったです。ありがとうございました。

(取材・構成/崎谷実穂)

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