クリエイター集団におけるCFOの役割とは

シバタ:でも、そうやって棚卸しをした結果、どうにも売れない在庫は廃棄するという決断を下す場合もありますよね。社内で篠田さんが「廃棄の鬼」みたいに怖がられたりしなかったんですか?

篠田:一方的に「ルールだから捨てますよ」と宣言したわけではなく、なぜ捨てる必要があるのかという部分から一緒に考えてきたので、そうはならなかったです。

 誰かが将来活用するつもりのある商品は、営業方針として特例にして持っておくことを決めればいい。後は、管理チームの仕事になります。会計士さんに、「こういうわけなので、これは捨てません」と分かっていただくように説明するわけです。

 だから、最終的には「会社やお客さまにとってベストな答えは何なのか?」を考えながら決めている感じです。

シバタ:そもそも、ほぼ日の経営における意思決定プロセスはどういう風になっているんですか? トップ中のトップクリエイターである糸井さんが、経営管理全体を行っているようには思えないですし。

篠田:はい、実際、そうですね。

シバタ:かといって、篠田さんがぐいぐい「来期は何億円売りましょう、それにはこういう予算を立てて……」といったことを提案しているわけでもなさそうだな、と。

篠田:どちらでもないですね。事業計画は、積み上げで作っています。商品の単価がいくらで、それが一つ一つ積み上がっていくと、これくらいの売上が出るだろうな、と。

 ただ、みんながやりたい企画を集めて、その実現のためにかかるコストと突き合わせてみると、当然、辻褄が合いません(笑)。それを出発点として、社内のいろいろな人と話をして、どこで数字を積み上げられるか、どこでコストを削れるか、というのを調整していくんです。

 その中で難しい判断がたくさん出てくるので、そこだけは社長である糸井にジャッジしてもらいたいなと思っちゃうんですよね。

シバタ:え、それは正しいことでは? 最終的には社長が決めたほうがいいことも多々ありますし。

篠田:いやー、本来は現場を預かる私たちが、もっとしっかりしないといけないのですが……。予算を決める時期はどうしても、糸井に「ここはもうちょっと削ったほうがいいですかね?」みたいな確認を何度もしにいくことになるわけです。

 そうすると、何回目かで「もうさ、その話やめよっか!」って言われちゃうんですよ(笑)。

 糸井は目の前のお客さまを喜ばせる、お客さまを増やす、ということには前のめりなんですが、ちまちました数字の話が続くと嫌になっちゃうんでしょうね。これは私のコミュニケーション戦略の課題です。

ほぼ日社長の糸井重里氏との役割分担について語る篠田氏
ほぼ日社長の糸井重里氏との役割分担について語る篠田氏

シバタ:すごく恐縮な質問ですが、そもそも糸井さんは数字が苦手なタイプなのですか?

篠田:はい、それはもうはっきり聞いています。糸井がフリーランスだった頃は、税理士さんに丸投げしていたそうです。確定申告の確認で15分の時間を取るのも嫌で、「5分になりませんか」と言っていたとか。

 今は当然、経営者としての責任もあるし、だいぶ数字に対するスタンスは変わっているんですけどね。

シバタ:なるほど。

篠田:PLやBSの数字とずっとにらめっこしていると、そのために仕事をしてしまう、だから本来やるべき仕事の質も歪んでしまう、という認識があるようです。これは糸井にかぎらず、誰にとっても真実だと思います。

 一方の私は、ほぼ日のCFOという立場なので、数字ありきで管理しなければならない部分がたくさんあります。とはいえ、数字との適切な距離感は保っていなければとも思っていて。

 ある意味数字というのは、すごく雑なもの。表現力に乏しくて、○と×、白と黒、といった言い方しかできないじゃないですか。その数字を、もっと普段の仕事の営みにある“ひだ”みたいなものに解釈する力、意志を持っていないと、危ないなと思っています。

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