シバタ:役に立てるというのはどういう部分で、でしょう?

篠田:私が入社した2008年頃のほぼ日は、社内の管理体制が本当に脆弱だったんですよ。そこで、私が管理部門の仕組みを作って回すことができれば、クリエイティブ職の皆さんがもっと「つくること」に力を注げると思ったんです。後は、お金の部分ですね。採算に対する考えがだいぶ緩かったというか……。

シバタ:赤字事業がたくさんあったんですか?

篠田:いえいえ、赤字というわけではないんですよ。良いモノを作り、そのためにはコストを惜しまず、相応の値付けをしてご購入いただく。この基本がしっかりしていたので、会社全体は儲かっていました。

 ですが、例えば「在庫がなかったことになっている問題」などがあって。要はPL(損益計算書)しか見ていなくて、BS(貸借対照表)の概念が抜け落ちていたんですね。

シバタ:それで儲かっていたのはすごいですね。

篠田:そこは、代表取締役社長の糸井重里が、「人が本当に喜ぶものは何か」「人が本当にうれしいことは何なのか」をずっと考え続けて仕事をしていたからだと思います。

 直感と言えば直感ですが、生活者の実感に根付いていたんでしょうね。他にない本当に良いモノには人は喜んでお金を出す、ということが分かっていて、事業が成り立っていたのだと。

社員の意識を変えた、年1回の「棚卸し祭り」

シバタ:では、「緩かった」とおっしゃっていた採算意識のような部分は、どうやってほぼ日の皆さんに根付かせたんですか? というのも、クリエイティブな仕事をしている人たちほど、一般的には数字に疎い面があるじゃないですか。

篠田:そうですね。ほぼ日は、まさにその「一般的なクリエイティブ職」の集まりでした(笑)。

 だからというわけではなかったのですが、私がほぼ日に来た後に全員でやることにしたのは、商品の「棚卸し」でした。

 ほぼ日の商品が置いてある倉庫に、私のような管理側の社員も、クリエイターとして活躍している社員も、みんなで一緒に行くんです。

シバタ:何がきっかけだったんですか?

篠田:ほぼ日って、昔は取り扱う商品すべてを受注生産していたんですね。だから、理論的には在庫がゼロということになります。

 でも、扱う商品数が増えて、受注生産以外の販売も行うようになってからも、その頃の認識が変わらないままでした。そこで、本当は在庫がどのくらいあるのか、チェックしに行こうと思ったんです。

 その時、「これを機に商品担当の人たちにも在庫を見てもらおう」と思いついたのが、みんなで棚卸しをすることになった経緯です。

シバタ:なるほど。僕は楽天に入社した最初の頃、ECコンサルタントと呼ばれる営業職をしていたんですよ。そこで、楽天に出店しているショップの多くは在庫を抱えていて、それをどう最適化するかに苦労されているということを知りました。

 今だから言えますが、営業の仕事自体は正直ものすごく嫌だったんですね。それでも、あの経験で在庫の感覚を体感できたのは、すごく勉強になりました。