決算書を読み解くことでビジネスモデル別の成長戦略が理解できるようになると評判の書籍『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』。著者のシバタナオキ氏は、決算に載っているような数字の情報をビジネスで使える知識に変換する力を「ファイナンス・リテラシー」と呼んでいます。

 このファイナンス・リテラシーを高める方法を、さまざまなトップビジネスパーソンとの対談で探っていく短期連載、第3回に登場するのは株式会社ほぼ日のCFO(最高財務責任者)篠田真貴子氏です。

 『ほぼ日刊イトイ新聞』のサイトを通じて、日々楽しいコンテンツやユニークな商品を販売しているほぼ日。このクリエイティビティあふれる会社を、会計や数字という切り口で見てみると……。そこには、篠田氏の「数字を定性的な価値に置き換える」やわらかな視点がありました。

BSの概念がなくても儲かっていた昔のほぼ日

シバタ:今、取材の部屋に来るまでに御社内を通ってきたのですが、オフィスが全然会社っぽくないというか、動物園みたいな解放感がありますね(笑)。

 篠田さんはほぼ日の前に、日本長期信用銀行、マッキンゼー、ノバルティスファーマ、ネスレという、いわゆる大企業で働いてこられたわけですが、こういうクリエイティビティあふれる会社に来るのは怖くなかったんですか?

篠田:あはは。私はもともと『ほぼ日刊イトイ新聞』のファンだったので、怖いという感覚はありませんでしたね。

<span class="fontBold">篠田真貴子(しのだ・まきこ)氏</span><br />株式会社ほぼ日 取締役CFO。慶應義塾大学経済学部を卒業後、日本長期信用銀行(現・新生銀行)に入社。約4年勤めた後、米ジョンズ・ホプキンス大学に留学して国際関係論修士号を、米ペンシルバニア大学ウォートン校でMBAを取得。その後マッキンゼー・アンド・カンパニー、ノバルティスファーマ、ネスレニュートルションで経営コンサルティングや人事、経営企画に携わる。2008年に『ほぼ日刊イトイ新聞』を運営する東京糸井重里事務所(現・株式会社ほぼ日)に入社、2009年より現職(写真:竹井俊晴、以下同)。
篠田真貴子(しのだ・まきこ)氏
株式会社ほぼ日 取締役CFO。慶應義塾大学経済学部を卒業後、日本長期信用銀行(現・新生銀行)に入社。約4年勤めた後、米ジョンズ・ホプキンス大学に留学して国際関係論修士号を、米ペンシルバニア大学ウォートン校でMBAを取得。その後マッキンゼー・アンド・カンパニー、ノバルティスファーマ、ネスレニュートルションで経営コンサルティングや人事、経営企画に携わる。2008年に『ほぼ日刊イトイ新聞』を運営する東京糸井重里事務所(現・株式会社ほぼ日)に入社、2009年より現職(写真:竹井俊晴、以下同)。

シバタ:ほぼ日に転職することにしたきっかけは何だったのですか? スカウトですか?

<span class="fontBold">シバタ ナオキ氏</span><br />元・楽天株式会社執行役員、東京大学工学系研究科助教、スタンフォード大学客員研究員。東京大学工学系研究科博士課程修了(工学博士、技術経営学専攻)。スタートアップを経営する傍ら、noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中。経営者やビジネスパーソン、技術者などに向けて決算分析の独自ノウハウを伝授している。2017年7月に書籍『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』(日経BP社)を発刊。
シバタ ナオキ氏
元・楽天株式会社執行役員、東京大学工学系研究科助教、スタンフォード大学客員研究員。東京大学工学系研究科博士課程修了(工学博士、技術経営学専攻)。スタートアップを経営する傍ら、noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中。経営者やビジネスパーソン、技術者などに向けて決算分析の独自ノウハウを伝授している。2017年7月に書籍『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』(日経BP社)を発刊。

篠田:ええ。子どもが2人生まれ、外資系企業でのキャリアに行き詰まりを感じていた頃に、ほぼ日の仕事のお話をいただいたんです。そこで、千載一遇のチャンスだと思って乗っかりました。

 正式に入社する前の2カ月ほど、あるプロジェクトでほぼ日と一緒に仕事をした時に、「ここなら私が役に立てることもありそう」と思ったんです。仮に1年、2年で辞めてしまったとしても、「いてもらってよかったね」と言ってもらうことができるなと。

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