シバタ:今は予実管理もご自身でやっているとおっしゃっていましたが、そういう数字回りの仕事から経営ビジョンを語るお仕事まで、経沢さんが一手に引き受けてらっしゃるんですか。
経沢:そうですね。でも正直なところ、そろそろ社員も増えてきたので、私はビジョンを語って方向性を示す仕事に専念しなければと思っています。社長がすべてのプロセスで細かい指示を社員に直接言うのは、組織の健全な成長を阻みますから。
そこで今は、実務やマーケティングに強くて、数字を判断基準にしながら社員のみんなを巻き込んでいくことのできるCXOを募集しています。

シバタ:一方で、社員の育成はどうやっていますか? 経沢さんの会社にも、数字が得意な人と苦手な人がいると思うのですが、苦手な人にはどういう風に教えているのでしょう?
経沢:まず「ゴールから考えてみて」と伝えますね。数字が得意な人って、少し先を見て逆算するということを無意識にやっているんじゃないかなと思うので。
さっきお話したリクルート時代の営業実績の作り方のように、長いスパンで逆算思考ができると、成功の確度もぐっと上がりますし。
シバタ:先にあるゴールを意識して、そこから逆算しながら意思決定をするという習慣は、ものすごく大切ですね。
そのお話に関連して、ちょうどこの間、面白い話を聞いたんですよ。ある創業社長が興した会社を後継者に引き継ぐ際、2代目社長はずっと社長のそばにいた番頭的な人にするべきか、能力的に凡庸だったとしても息子を社長にするべきか、という議論があって。
一見、優秀な番頭を2代目社長にしたほうが良さそうに思えますが、番頭は目先の利益を確保しようとして、設備投資などをしないんだそうです。
一方、息子は仮にビジネススキルが凡庸だとしても、「親の作った会社をできるだけ長く残そう」「できれば自分の息子にも継がせたい」と考えるので、遠い先のゴールを意識しながらロングタームで物事を判断しようとする。
だから、確率的には、凡庸でも息子が2代目になったほうが、長い目で見て業績が良くなるケースが多いのだそうです。
経沢:すごく面白いお話ですね。社会情勢が目まぐるしく変わるから、先々のことを考えても無駄だという見方もありますが、そうじゃないんだと。すごく共感します。
会社も個人の人生も、ゴールが先にあって、それを達成するために数字を意識する。そうやって会社の数字を見るようにすると、「ドライで無機質なもの」「自分とは関係のないもの」というイメージも変わるんじゃないでしょうか。必ず数字には情熱がこもっていますよね。
シバタ:素敵な締めをありがとうございます。
(取材・構成/崎谷実穂)
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