数字が苦手な人は「ゴールから考える」習慣を

シバタ:経沢さんはその後、楽天に転職されたわけですが、創業間もない頃だったんですよね?

経沢:はい、まだ社員が20人くらいしかいなくて、楽天市場の事業が急成長していたタイミングでした。

 楽天でも、最初は営業部門に配属されたんですけど、研修などもなくて途方に暮れました。出店を希望される方々からの資料請求に対して電話をかける、ということは分かるんですが、何をどう話せばいいのか全く分からない。

 先輩に聞こうにも、先輩も電話をかけまくっているから話しかけられない。そんな感じで、根性のあるひと握りの社員だけが自力で成長する、といった状況だったんです。

 私は辛くて逃げ出したくなったのですが、三木谷さん(三木谷浩会長兼社長)とお話しする機会があって、「営業担当がすべてやるのではなく、店舗を開店するまでの担当と、店舗を開店してからの担当を分けたほうがいいのでは?」と提案して、ショップアドバイザー制度を作ったんです。

シバタ:今では当たり前のように機能しているショップアドバイザー制度を、最初に始めたのは経沢さんだったんですか!

経沢:もちろん、周囲のアドバイスがあっての実現ですが、三木谷さんに「経沢さんはエグゼキューション能力が高い」と評価していただき、うれしかったですね。

シバタ:エグゼキューション能力というか、事業の仕組み化ですよね。すごいです。

経沢:オペレーションを仕組み化したり、効率化したりするのが好きなんですよ。

シバタ:そういう経験は、ご自分で会社を立ち上げる際に役に立ったと思われますが、実際はどうでしたか? 社長になるというのは、これまでと全然違いましたか?

経沢:トレンダーズを立ち上げた当初は私1人の会社だったので、実質フリーランスみたいな感じだったんですよ。最初の7年くらいは個人商店に近かったです。

 そこから、2006年くらいに上場しようと決めて、2012年に上場しましたが、創業の頃は「会社を経営する」ことや「人を雇う」こと自体がすごく怖かったので、1社50万円の顧問業務を5社受注して、半年契約を交わしてからオフィスを借りるというチキンぶりでした(苦笑)。

シバタ:相当コンサバですね。

経沢:そうなんですよ。今やっているキッズラインも、ほとんど出資を受けずにスタートして、最初は個人の講演やnoteの執筆、テレビ出演などの売上で何とかしのいでいました。キッズラインは命を預かる事業ですし、ある程度になるまでは資本政策に頼るのが怖かったのです。

 なので自己資金で始めて、まずはコツコツと安全、安心なシステムづくりを最優先させました。