楽天の今回の例では、上のスライドで説明がある通り、のれん減損部分は会計上のIFRS営業利益に大きく響いているものの、税務上は損金として認めていません。そのため、結果として楽天全体の実効税率が49%になってしまったという、非常に厳しい結果になっています。

 今回の楽天とDeNAのように、買収時に見込んでいた成果が実現できないとなった場合には、大きな減損処理をしなければならず、その減損は営業利益だけではなく、税務にも非常に大きなインパクトを与える、というデメリットもあるのです。

 もし皆さんの担当する事業がM&Aをする場合、その事業の責任者として気を付けなければならないのは、この点です。

 買収するときは右肩上がりの成長を期待していたのですが、万一それが実現できなかった場合、のれん代の減損という形で非常に大きな営業損失が発生する可能性があります。

 これらの営業損失は、せっかく本業で稼いだ利益を打ち消してしまう可能性もありますので、簿価と比べて高すぎる評価額での買収は両刃の剣である、ということを覚えておきましょう。

大きなのれん代が発生する仕組みとは

 では、なぜ大きなのれん代が発生するのでしょうか。少し具体例で見てみましょう。

 例えば、ウェブを使ったフリーマーケット事業を営むスタートアップ企業が10億円の資金を調達したとします。この会社は1ユーザーを獲得するのに1000円必要で、ユーザー数や取扱高は指数関数的に伸びていると仮定します。1ユーザーを獲得すると、そのユーザーから年間500円の売上が平均的に得られるとしましょう。

 このような場合、スタートアップ企業は資金調達したお金をユーザー獲得に大量に費やして、ユーザー数を増やすことに専念する、というのが一般的です。

 なぜそのようなことをするのかと言うと、このスタートアップ企業や買収する側の大企業は、獲得したユーザーを1ユーザーあたり毎年500円の売り上げを、「資産」とみなすからです。

 一方で、これらの「ユーザー資産」は貸借対照表には一切計上されません。

 つまり、買収する企業はこれらのユーザーを「資産」と評価するのに対し、会計上はどこにも現れない項目であり、それらの差額がのれんとして計上されるということになります。その価値が高いと考えらるからこそ、のれん代は大きくなっていくのです。

 楽天とDeNAが大きくのれん代を大きく減損したということから何が分かるのでしょうか。両社は業容の拡大についてM&Aに大きく頼り、かつ事前の期待ほどのパフォーマンスを得られなかったということでしょう。M&A依存はIT企業では珍しいことではありません。今後も活発化していくでしょう。ただ、あまりにものれん代の減損が多いと、企業経営者としての目利き力を株主に問われることになります。