シバタ:すごい量ですね! 

須藤:その後は、『ゼクシィ』『じゃらん』『ケイコとマナブ』などの月刊誌を担当して、最後は不定期刊行のムックを担当していました。これもまた、すさまじい点数があるんですよ。

 しかも、当時はこれらを何部配本して、何部返品されたかという帳票のデータがほとんど紙で出力されていました。それをパンチ屋(データ入力業者)に送って、Excelにしてもらうんです。

 ただ、雑誌は売り出し初日から3日目までの初速が命。その発射角度で、最終的な売上がほぼ見えてきます。だから売上データを少しでも早く知るために、日販(日本出版販売株式会社)さんとトーハンさんの二大取次※1に何度も足を運んでいました。

※1...取次:出版社と書店の間をつなぐ流通業者。市場の約7割が上位2社の取次によって流通している。取次は全国にある書店の売り上げデータを持っている

シバタ:わざわざ足を運んでデータを取ってくるんですか。今では考えられない作業ですね。

須藤:ネット経由で売上データを見られるのは、紀伊國屋書店チェーンだけだったんですよ。それも、今ほどリアルタイムじゃないデータでした。だから、全体の売上進捗が全然分からない。

 そこで日販のある御茶ノ水とトーハンのある江戸川橋まで行って、数字を集めて、メモって、自分でExcelに打ち込んで……というのを毎週ひたすらやっていました。

シバタ:そのお仕事は、何年くらいやられたんですか?

須藤:3年目までやっていました。その3年間で、一都六県の本屋、約2000店くらいは足を運んだと思います。

 で、1日で50店舗とかお店を回るような経験をずっとしていると、だんだん「この地域ではどんな雑誌が売れるか」「あのお店ではなぜこの雑誌が売れないのか」も分かるようになってくる。

 例えば、結婚情報誌の『ゼクシィ』が多く配本されて、順調に売れている書店さんがあるとしましょう。それはなぜなんだろう、と考えた時に、この町は若い女性がたくさん住んでいるとか、女性が入りやすい店作りをしてる本屋さんだとか、土地勘、店の状態を把握して初めて「数字のリアリティ」が見えてくるんですよ。

シバタ:すごいな。それは、会社から店舗を回れと言われていたんですか?

須藤:言われていたと言えば言われていたし、ただオフィシャルには言われていなかったような(笑)。でも、同僚もみんな行ってました。

 数字が全く整っていないところから、自分で確かめながら作っていくという経験が、僕の数字感覚を形づくっている気がします。

どんなビジネスも、答えは現場にある

シバタ:若くても結果を出すために、そうやって努力していたのですね。

須藤:新人時代は何も分かっていませんからね。少ないデータを足で必死にかき集めて、緑色のインクで印刷された伝票を眺めながら、売れている理由、売れない理由を必死で考えなければなりませんでした。

 今、(Webアクセス解析ツールの)Google Analyticsなどを見ていると、ちょっと感動しますもん。「こんな便利なツールが新人時代にあったら......」って。

シバタ:でも、Google Analyticsしか見たことのない若手のマーケティング担当者は、須藤さんのような数字感覚が身に付かないと思いますよ。