減産実施により、国際石油市場では、需給調整機能が復活。協調減産が原油価格を下支えし、原油価格の回復による米国シェールオイルの増産が原油価格の上値を抑えるという構造が成立した。その結果、17年11月平均のWTI原油先物価格は56.66ドルと16年11月平均の45.76ドルから10ドル強回復している。減産幅はOPECが約120万BD(バレル/日)、非加盟10か国が約60万BDの合計約180万BDで、世界の石油需要の2%弱に相当する。

 したがって、国際石油市場では、当分の間、協調減産とシェール増産の綱引きが続き、原油価格は堅調には推移するものの、大きな上昇はないものと見られる。その意味では、米国のシェールオイル生産業者は、OPECや非加盟主要産油国にとっては、引き続き、市場におけるシェア競争のライバルである。

シェール革命と米国の中東政策

 シェールオイル革命は、米国を世界の最大産油国に押し上げ、国際石油市場の状況を一変させたが、同時に、米国の中東政策をも大きく変えた。

 すなわち、エネルギー自給率の向上によるエネルギー安全保障環境の改善で、オバマ前政権下においては、中東地域に対するコミットの低下、不介入主義、撤退政策が目立った。言い換えると、米国にとって、産油地域としての中東の重要性は大きく低下し、イランとの核合意の推進、サウジに対する同時多発テロの損害賠償を認める法律(JASTA)の成立等、第二次世界大戦直後以来のサウジとの石油の安定供給と国家の安全保障を相互に保証する「特別な関係」にも大きな亀裂が生じた。

 「シェール革命」が全てを変えてしまったのである。

ロシアにとっての減産延長

 国際石油市場におけるサウジとロシアの両国の協調関係は、17年初めからの協調減産をベースに、今回の減産延長で一層強化された。原油価格維持、暴落防止に向けた両国の協調関係の背景としては、短期・長期それぞれの両国の思惑・戦略が存在している。

 ロシアにとって、短期的に、減産延長による原油価格維持は、18年春に予定されている大統領選挙におけるプーチン大統領再選の大きな前提条件である。原油価格維持は、安定的なロシア経済運営のための必要不可欠であるからだ。ロシアにおける石油・ガスは、財政収入の約50%、貿易収入の約70%、国内総生産(GDP)の約40%を占めているだけでなく、ロシアルーブルの為替レートやロシア国債価格は、原油価格にほぼ連動している。

 技術的に、ロシアの油田における減産は大きな困難を伴う。油井一本当たりの生産性が低く、減産のためには多数の油井を閉じる必要があり、しかも、原油のワックス含有分が高く、一旦生産を止めれば、再開は難しいと言われている。そのため、セチン総裁をはじめ国営石油会社ロスネフチの関係者・実務者は、協調減産への参加自体に極めて消極的であり、減産参加はプーチン大統領の政策的なイニシャティブによる部分が大きかった。

サルマン国王の訪露

 他方、サウジアラビアにとっても、原油価格維持は、政策的に必要不可欠である。特に次期国王を目指して実績作りが必要な若き実力者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子にとって、経済の石油依存からの脱却を図る国家改革計画「サウジ・ビジョン2030」の進捗が難航する中、ビジョンの目玉とされ、18年中に実施が予定されている国営石油会社「サウジアラムコ」の新規株式上場(IPO)の成功のためには、原油価格維持が必要不可欠な状況にある。

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