それにしても、米国も困ったものである。

 トランプ大統領は、カタール断交について、カタールはテロ支援国家であると非難し、サウジなどを支持している。一方で、国防総省や国務省は、サウジなどに冷静な行動を促し、事態の鎮静化を目指すという、ちぐはぐな対応になっている。トランプ大統領が、サウジに置いておけなくなった空軍基地がカタールにあることを認識していたか疑問視する見方さえある。

 どう見ても、カタールは米国の対イラン政策変更の犠牲者である。

 今回の国交断絶は、中東におけるサウジ対イランという対立軸が明確になる中で、双方に挟まれた小国が独自路線で生き抜いてゆくことが、いかに難しいかを示している。独自外交を追求するためには、外交環境の変化というリスクを十分に考慮しておかなくてはならない。保険の掛け過ぎは、かえって危険なのかもしれない。

 同時に、こうした小国の独自外交が、大国間のバランスを崩してしまいかねないことも認識しておく必要があろう。カタールのムハンマド外相は、ロシアにも飛び、ラブロフ外相に理解を求めた。ロシア・イラン・カタールは天然ガスの三大埋蔵国でもある。

原油価格への影響

 さて、今回も、原油価格はほとんど反応しなかった。

 6月5日のニューヨークWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物価格は前日比0.26ドル安の47.60ドルと下落した。

 直後の6月7日にはイランのテヘランで「イスラム国(IS)」による国会議事堂とホメイニ廟の連続爆破、18日にはイランによるISに対する弾道ミサイルの報復攻撃、さらには、19日にはサウジによるイラン革命防衛隊船舶の拿捕事件も報道された。

 このように中東情勢が緊迫度を高めているのに、WTI先物は10カ月ぶりの安値を記録した。OPECと非OPECの協調減産合意前の水準に逆戻りしたことになる。地政学リスクの高まりの中での原油価格低迷をどう理解するか。

 市場は、本当に、こうした対立をOPEC内での結束を弱めるものとして、供給過剰に拍車をかけるものと理解しているのであろうか。

 筆者には、サウジとイランの対立軸は、「時限爆弾」、あるいは「地雷」のようなものに思えてならない。その回避に向けた努力を行うとともに、危機管理を考えておいた方が良いと考える。

 ここまで書き上げて、カタールに対する具体的な要求リストを作成中といわれるサウジから、6月21日、皇太子交代という大ニュースが飛び込んできた。このニュース自体は、前々から噂されていたことであり、驚きはしないが、なぜこのタイミングなのか、が気にかかる。そして、副皇太子から昇格したムハンマド・ビン・スルタン新皇太子が、対イラン強硬派と見られ、今回の断交措置をリードしたと言われるだけに、この対立がエスカレートしないか、懸念されるところである。

(次回に続きます)