「防波堤」としてのGCC

 さらに、サウジにとって、気になることは、カタールのイランに対する宥和的姿勢であろう。

 アラブ民族の盟主・イスラム教の盟主を自任するサウジにとって、歴史あるペルシャ民族とイスラム教の少数派シーア派を代表するイランは、中東における地域大国として、ライバル関係にある。OPECの価格政策をめぐっても、サウジは穏健派の代表として、イランは強硬派の代表として、対立することが多かった。

 1979年、労働者・学生等によって王政が打倒された後、亡命中のホメイニ師の帰国によって、シーア派の政教一致国家となったイランに対して、サウジ、UAE、クウェート、バーレーン、カタール、オマーンの湾岸君主制国家6カ国は、シーア派宗教革命の輸出を阻止するため、81年5月、湾岸協力会議(GCC)を結成、協力体制を強化することとした。

 これら6か国の君主一族はイスラム教の多数派であるスンニー派であるが、アラビア(ペルシャ)湾周辺はイランに近いこともありシーア派住民も多い。バーレーンにおいてはシーア派住民が多数派であり、サウジでも油田地帯である東部湾岸にはシーア派住民が多い。そのため、ペルシャ湾は「シーア派の海」とも言われている。

 その後、GCCは、1990~91年の湾岸危機・戦争に当たってクウェートを軍事的に支援、2011年3月の「アラブの春」ではバーレーンのシーア派民衆暴動に介入、2015年3月にはイエメン空爆を行うなど、軍事・治安面での協力を進めた。さらに、石油収入の低迷を背景として、GCC統一付加価値税の導入が決定され、統一関税制度の導入や通貨統合も検討されるなど、欧州共同体的な経済統合を目指す方向も打ち出されている。

イランのサウジ包囲網

 特に、米国による「イラク民主化」の結果としてのイラクのシーア派国家化と国内分裂、イラン・イラク同盟関係の成立、さらには、イエメンのシーア派クーデターを含めて、イランによるレバノン・シリア・イラク・イランを結ぶシーア派のサウジ包囲網が形成されつつある現状においては、サウジにとっては、GCC強化を通じたイラン対策強化が、安全保障上の最優先課題であろう。

 そうした中で、隣国カタールが、独自路線で勝手なことをしては困る。それがサウジの本音だろう。

 トランプ大統領のリヤド訪問直後には、バグダッドで、カタールの外相とイランの革命防衛隊司令官が会談したと伝えられている。

 サウジとしては、核合意を締結し経済制裁を解除するなど、親イラン的なオバマ政権から、イランを敵視するトランプ政権に交代したことは、懸案を解消するきっかけになったはずだ。トランプ大統領の初外遊によって、オバマ時代に悪化していたエジプトなどを含めた伝統的友好国との関係が修復されるとともに、イラン封じ込めが国際的に確認された直後のタイミングを見計らって、エジプトやUAEといった友好国とともに、カタールに対して政策変更を強要したということであろう。

今後の展開

 断交後、2週間が経過し、断交国からのカタール国民の退去期限も経過した。引き続き、クウェートを中心に双方の仲裁が行われているが、出口は見えない。

 当初、5月23日のタミーム首長の「発言」を「フェイク・ニュース」であるとして、各国の理解を求めようとしていたカタール側も、サーニ家一族のムハンマド外相が、「誰にも、降伏はしない」、「経済封鎖を解除しない限り、交渉には応じられない」として、対決姿勢を強めている。

 財政的には豊かなカタールゆえ、短期的には経済的に耐えられなくなることはないことから、問題解決までには長期間を要することになろう。