カタールは、今回の断交国エジプトにもLNGを輸出しており、UAEにはガス状の天然ガスを「ドルフィン・パイプライン」で供給しており、UAEの天然ガス需要の約30%を賄っている。さらに、このパイプラインは、オマーンに繋がっており、オマーンにも天然ガスが供給されている。現時点においては、このパイプラインは引き続き従来通り稼働している。

 カタールの北方海上に広がるガス田「ノース・フィールド」は世界最大の構造的ガス田と言われ、豊富な埋蔵量を誇っているが、イラン領海から広がる「サウス・パルス」ガス田と地質構造的に繋がっていると見られることから、カタールは、伝統的にイランに配慮した、宥和的な外交政策を取っている。

 また、天然ガスについては、ロシア、イラン、カタールの3カ国が中心となって、「ガス輸出国フォーラム」(GECF)を組織し、毎年閣僚会議を開催するなど、交流・情報交換が行われており、将来的には、「ガス版OPEC」の形成を目指す動きも見られた。

 現時点では、断交当事国向けを含め、石油、天然ガスの輸出には、直接的な障害は出ていない模様であるが、サウジ、UAEでは、多港積みタンカーの場合、前港・次港をカタールとする寄港を拒否している模様であり、積み地の変更を必要とするタンカーも出るものと思われる。また、大型タンカーの補給地であるUAEのフジャイラでは、カタールに寄港するタンカーへの補給を拒否している模様である。

断交の直接的契機

 前述した通り、6月5日に突如、国交断絶という強硬な措置が取られたわけであるが、以前から、サウジとカタールの間には対立の兆しはあった。

 5月21日、サウジは、トランプ米大統領の初外遊に合わせ、首都リヤドに、カタールのタミーム首長を含む、55カ国首脳を集め、米・アラブ・イスラム首脳会議を開催、テロリスト・過激派組織の打倒とイランとの対立姿勢を確認した。

 ところが、23日、タミーム首長が国内の軍事式典で、・周辺諸国は、過激派組織を支援している、・ムスリム同胞団やハマースは、抵抗組織であり、テロ組織ではない、・イランと敵対することは賢明ではない、と発言したと、周辺各国メディアが、カタール通信をキャリーする形で一斉に報じた。

 これに対し、カタールメディアは、放送のハッキングによる「フェイク・ニュース」であるとして、「発言」を否定した。結局、真相はやぶの中である。クウェートがこの対立の仲裁に入り、妥協案を示したと言われているが、その後、何らかの事情でこじれ、6月5日の断交に至ったのではないか、と見られる。

大使召還とリヤド合意

 ただ、周辺各国にとって、カタールとの対立は、今に始まった話ではない。

 従来から、カタールは、ムスリム同胞団を積極的に支援してきたが、これを警戒する周辺諸国やエジプトは、いら立ちを募らせ、2014年3月には、サウジ、UAE、バーレーンがカタール駐在大使を引き揚げ、外交関係を格下げする事態が発生していた。

 ムスリム同胞団は、1928年にエジプトで始まったイスラム法によるイスラム国家の確立を目指す政治運動であるが、その特徴として、医療や教育といった大衆向けの社会活動を基盤としている。

 エジプトでは、2011年2月の「アラブの春」で、約30年続いたムバラク独裁政権が退陣したあと、ムスリム同胞団を中心としたムルシ政権が成立したが、その復古的政策から、民心が離れ、13年7月には軍事クーデターにより、現在のシーシ政権が成立した。ムスリム同胞団は、シーシ政権から見ればテロリスト・過激派組織であり、湾岸君主制諸国にとっても、ムスリム同胞団の草の根的色彩は脅威である。

 この時は、クウェートのサバ―ハ首長の精力的シャトル外交により、14年11月、カタールはムスリム同胞団と決別する旨の「リヤド合意」により和解し、正常な外交関係を回復した。