天然資源で潤うカタール

 アラビア半島はサウジアラビア(日本の約6倍の面積)がその大部分を占めるが、カタールは、その中央部のアラビア(ペルシャ)湾に突き出した半島部分にある首長国(秋田県よりやや小さい面積)である。人口は約240万人で、うち自国民は約10%にとどまる。それ以外は外国人労働者である。豊富な石油・天然ガス収入を背景に、積極的な国家建設、国民への高福祉を進めた、典型的な「レント(地代・剰余価値)国家」である。

 第一次世界大戦後、英国の保護領となり、英国のスエズ以東撤退に伴い、1971年に独立した。首長は、サウジ中央部のネジド地方から19世紀に移住した豪族サーニ家が、宮廷クーデターなどはあったものの、世襲している。

 先代のハマド首長が宮廷クーデターで首長に就任した1995年以降、カタールは、全方位型の独自外交を展開している。同時に国内の自由化、民主化を推し進め、2004年6月には、憲法に相当する「恒久基本法」を制定し、サーニ家の統治を前提に、三権分立の政治体制と女性参政権を認めた。

全方位型の独自外交

 カタール独自の積極外交として注目されるのは、1995年、アル・ウデイドにサウジから撤退した米空軍基地を受け入れるとともに、米海兵隊旅団規模の装備の事前集積を行うなど、米国の中東最大の軍事拠点を提供したことである。

 また、96年には、衛星放送「アルジャジーラ」を開局し、中東系の通信社としては自由主義・民主主義的色彩の濃い世界的なメディアを立ち上げた。アルジャジーラは、スポンサーであるカタール政府は別として、周辺諸国の政府批判を繰り返すなど、周辺諸国からは何度も閉鎖要求が出ている。

 さらに、2009年のガザ侵攻により閉鎖されたものの、1996年からはアラブ圏では唯一のイスラエル通商代表部を設置していた。

 並行して、中東域内のみならず、世界規模の国際会議やスポーツイベントを積極的に誘致し、カタールの発信に務めた。例えば、2001年11月の国際貿易機関(WTO)第4回閣僚会議(ドーハ・ラウンド)、2012年12月の気候変動枠組み条約第18回締約国会議(COP18)などの国際会議。それに2006年のアジア大会、2019年開催予定の世界陸上競技大会、そして2022年開催予定のサッカーワールドカップなどと、国際的なスポーツ大会の開催国としても存在感を示してきた。

 同時に、従来から、エジプトの「ムスリム同胞団」、パレスチナの「ハマース」、レバノンの「ヒズボラ」等の組織に対しても、アラブの「抵抗運動」であるとして、資金援助や連絡拠点の提供などを行っていると言われてきた。「テロリスト」、「過激派組織」の定義が、関係各国・関係者の間で異なる中では、こうしたカタールの支援が周辺各国の緊張を高めているとの批判も多い。また、こうした行為は、カタールにとっての「保険金」、あるいは、ヤクザに対する「みかじめ料」に近いとする見方もある。

 今回の断交の背景には、こうした事情も大きく影響している。

ガス大国としてのカタール

 カタールは、OPEC(石油輸出国機構)加盟国ではあるものの、産油国としては大きい方ではない。2016年の原油生産量は68万BD(=Barrels per Day、1日当たりの原油生産量)と14カ国中10番目である。だが、わが国の原油輸入先としては、約30万BDと9%を占める。サウジ、UAEに次ぐ第3位となっている。

 むしろ、カタールは、産ガス国としての存在感が大きい。天然ガスの埋蔵量の約15%を占め、ロシア、イランに次ぐ第3位のガス埋蔵国である。液化天然ガス(LNG)の輸出能力は年間約8000万トンと、世界最大の輸出国で、わが国の輸入先として、豪州、インドネシアに次ぐ第3位、約15%を占めている。2011年の東日本大震災の後、原子力発電所の運転停止に伴い、LNG火力発電所の稼働増強のため、カタール産のLNG輸入を増量したことは記憶に新しい。