3つの要因が複雑に絡む

 今回の原油価格上昇局面では80~100ドルへの上昇予測や産油国側の高値待望論も多かった。しかし、むしろ産油国側には次の3つの要因から、高値警戒感が出てきたものと考えられる。

 1つめは米国のシェールオイルとのシェア競争が続いていること。米エネルギー省によれば、18年4月の米国シェールオイル生産量は1日あたり716万バレルと過去最高を記録した。18年の年間産油量は1日あたり1070万バレルと38年ぶりに過去最高を更新する見通しだ。原油価格はOPEC、非OPEC産油国の協調減産が下値を支え、シェールオイルが上値を抑える展開が続いてきた。

 減産効果で原油の価格が上昇すると、シェールオイルは採算性が向上して増産速度が加速する。シェールオイルによって市場シェアが侵食されることになるが、原油価格を維持するには減産強化を続けざるを得なくなる。

 2つめは多くの場合、地政学リスクの高まりの当事国となっているサウジやイランの動き。両国からすると、自ら供給不安を招く状況は産油国としてまずい。国際世論を味方につけるためには、安定供給への取り組みを示し、緊張を緩和する必要がある。

 3つめは原油価格が高止まりした場合に生じる消費国の石油離れへの警戒感。IEAは5月の石油市場報告で、原油価格の上昇によって18年の世界石油需要の前年比伸びを、1日あたり150万バレルから140万バレルに下方修正した。英仏が40年までに内燃機関自動車の販売を禁止する方針を表明するなど、電気自動車の導入に向けた動きが加速している。石油業界には、16年11月のパリ協定発効など環境圧力も強化。こうした環境下、原油価格の高値維持は産油国にとって長期的にマイナスになりかねない。

 サウジアラビアが国営石油会社サウジアラムコの株式上場(IPO)を控えているため、原油価格の高値維持を必要としていると見る向きもあるが、上場規模は発行株式の5%以内とされており、試験上場の色彩が強い。このため、サウジは原油価格の高値維持にこだわっていないとみるべきだ。

 また、米国のイラン核合意からの離脱は
(1)協調減産で石油需給に余裕がある
(2)イランでは国民の圧倒的多数で再任されたロウハニ政権がある程度保守強硬派を抑えることが可能――
など不幸中の幸いといえる面がある。