地政学リスクの高まり

 原油価格はその後、2018年2~3月には世界的な株価低迷などのあおりから60ドル台前半と停滞したものの、4月からは再び堅調に推移。ここでの上昇の背景は地政学リスクに対する警戒感が大きいとみられる。

 例えば4月14日には米国、英国、フランスの3カ国がシリアに対し化学兵器使用の制裁として空爆を行った。4月21日には、イエメンを実効支配するシーア派武装集団「フーシ派」が対立するサウジに対し、イラン製のミサイルによる攻撃を行った。シリア、イエメンにおいては、ともに政権側をにイラン、反政府側をサウジが支援しており、両国の代理戦争の形になっている。現時点でサウジとイランの直接対決は考えにくいが、2大産油国である両国の対立関係は民族的、宗派的側面を含めて、国際石油市場にとっても中長期的に大きな懸念材料である。

 5月に入ってからも8日、トランプ大統領がイラン核合意からの離脱とイランに対する経済制裁の再開を表明。10日にはイスラエルがミサイル攻撃への報復としてシリア国内のイラン革命防衛隊の軍事基地を攻撃した。14日には在イスラエルの米国大使館がエルサレムに移転。パレスチナのガザ地区で大規模な暴動が発生した。

 政治的不安定は直ちに石油需給に影響を与えるものではないが、原油先物市場では値上がり要因として意識された。4月上旬に62~3ドル水準だったのが、下旬に68ドル台まで上昇。イラン核合意からの離脱表明の前日にあたる7日には、3年5か月ぶりに70ドル台に乗せた。原油需給のリバランスがあるところに地政学リスクの高まりが重なり、原油価格が大きく上昇したものと考えられる。

サウジ、ロシアのエネルギー相が会談

 しかし、長くは続かなかった。地政学リスクは不確定な状態への不安・懸念が核心であり、石油供給に障害が発生しない限りその影響はやがて剥落する。相場格言にあるように「噂で買い、ニュースで売る」のだろう。高値に対する利食い売りなどが多かった模様だ。

 原油先物は5月22日から4日続落。この頃から一部で6月22日に開催予定のOPEC総会、OPECと主要産油国の合同会議で減産幅の縮減など減産の緩和観測を報じられた。5月23日には、英BPのCEOが米国のシェールオイル増産とOPEC、非OPEC加盟国の協調減産が緩和される見通しだと発言した。決定的だったのは、サウジのファリハ、ロシアのノバク両エネルギー相が5月24日にロシアで会談した後の記者会見で、6月22日の会合での減産緩和を示唆したこと。これを受け5月25日、WTI原油先物価格は3ドル近く下落し18日ぶりに70ドル台を割った。