また、日本政府は、サウジとアブダビの国営石油会社と、平時には通常の商業利用を認めるが、有事にはわが国に優先供給を行う旨の協定を結び、沖縄と鹿児島に原油タンクを貸与している。現時点では、両国の貯蔵量はわが国消費量の約4日分であるが、経済産業省では、これを「産油国共同備蓄」として拡充して行く方針を打ち出している。

 このように、石油危機以来の国際的な官民挙げての石油安定供給確保に向けた取り組みにより、簡単には、大規模な供給削減や途絶と言った石油危機は起こらなくなった。また、仮に危機が発生したとしても、影響を最小限に抑えるための危機管理が可能となった。

トランプ大統領の初外遊は中東

 石油をめぐるエネルギー安全保障の環境は、石油危機当時とは様変わりし、国際石油市場の「地政学リスク」への耐性は劇的に改善されたと考えて良い。

 しかし、石油製品が国民生活や産業活動に必要不可欠で戦略物資である以上、国際石油市場が「地政学リスク」から解放されることはない。「地政学リスク」が、不確実性や予見可能性の段階を超え、産油国で顕在化し紛争や衝突に至った場合には、現実の石油需給に直接的に影響を与えることになる。

 また、国際関係全体を俯瞰すれば、各国間の相互依存関係が深化する中、中国の「一帯一路」政策やEU統合など、政治と経済の一体化が進んでいる。トランプ政権の成立によって、その傾向はさらに進むであろう。

 そんな中、トランプ大統領は、5月22日からの初の外遊先に、イスラエル・サウジアラビア・バチカンを選んだ。オバマ政権時代に悪化した伝統的友好国であるイスラエル、サウジとの関係修復、両国との対イラン政策・対シリア政策の調整が主な焦点になるものと思われるが、今後の展開次第では、冒頭で言及したように、超大国間、大産油国間の対立がさらに激化するかもしれない。

 さらに、5月25日には、OPECとロシア等の非OPEC主要産油国による協調減産の延長を巡る閣僚級協議が予定されている。協議の合意は、引き続き、サウジとロシア・イランの協調が焦点となろう。