過去の原油価格の変動

図1 原油価格の推移(2014年1月~2017年4月)
図1 原油価格の推移(2014年1月~2017年4月)
出所:NYMEXデータ等より作成
[画像のクリックで拡大表示]

 2000年代初頭から2008年夏の原油価格(WTI先物)は1バレル当たり30ドル台から史上最高値の147ドルに向けての上昇局面だった。要因としては、BRICSを中心とする途上国の石油需要急増による需給ひっ迫(需給要因)、世界的なカネ余りと年金基金等新規機関投資家の参入による原油先物市場への大量の資金流入(金融要因)、そして2001年の米同時多発テロ(いわゆる「9.11」)や2003年3月のイラク戦争を契機とするアフガン・イラク等中東情勢の緊迫化(地政学要因)といった要因による価格変動であると説明された。

 また、2008年9月のリーマンショック後の140ドルから2009年初めには40ドル近くまで下落した要因は、金融収縮とリスクオフによる原油先物市場からの資金流出(金融要因)、世界的な景気後退に伴う石油需要の減少(需給要因)によるものであった。

 さらに、2009年初めの40ドル水準から2010年末の100ドル台回復とその後の高止まりは、OPECの減産(需給要因)、景気対策としての世界的な金融緩和(金融要因)、「アラブの春」による中東情勢の緊迫化(地政学要因)によると説明された。まさに、原油価格の上昇・下降が、的確に3つの要因で説明できた。

2014年夏以降の価格低迷

 その後、2014年夏以降の100ドル前後から2016年初めの30ドル割れまでの暴落については、シェールオイルの増産・世界的な経済低迷による需要増加の減速・シェア回復を目指したOPEC増産による需給緩和(需給要因)、さらに2014年秋の米国の金融引き締め・ドル高政策への転換の影響による先物市場からの資金流出(金融要因)が見られた。

 ところが、地政学要因については、2011年の「アラブの春」の後遺症として、シリアやイラクにおける内戦激化と「イスラム国」の勢力伸長、リビアやナイジェリア等の反政府勢力との対立、さらには、シリアやイエメンにおける宗派対立を背景とするイラン(シーア派)とサウジ(スンニー派)の実質的な代理戦争の深刻化など、中東地域における「地政学リスク」はむしろ高まった。従来であれば、原油価格が高騰してもおかしくない状況で、原油価格は暴落し、低迷を続けた。

 2015年3月26日のサウジ軍によるイランが応援する隣国イエメンへの空爆(内戦介入)時には一日で2.22ドル(4.5%)上昇したが、翌日には反落し3営業日続落した。また、在テヘランのサウジ大使館襲撃を契機とする2016年1月3日のサウジの対イラン国交断絶時には、むしろ、減産に向けたOPEC内の協調が難しくなったとして、原油価格は前年末比0.28ドル下落し36.76ドルとなり、その後1月22日には26.55ドルと、2016年の年間原油価格の最低を記録した。

 このように、最近では、地政学要因は原油価格にはあまり影響しなくなっているかのように思われる(図1参照)。

次ページ そもそも地政学リスクとは?