サウジ・アラムコのIPO、延期の声も聞こえるが…

 サウジにとって内政上の最重要課題は、国家改革計画「ビジョン2030」の実施。目玉事業は国営石油会社サウジ・アラムコの新規株式上場(IPO)だが、その状況が変わってきた。

 当初、企業価値2兆ドルの5%未満を18年中に海外で上場するとしてきたが最近「IPOを19年に延期」「国内証券取引所への上場を先行させる」といった情報が聞こえてきた。石油埋蔵量などの情報開示、意思決定における政府の権限などがネックとなっているという。こうしたなかで英国は上場ルールに国営会社を対象とする特別のカテゴリーを追加。一方、米国はテロ支援国家損害賠償法(JASTA)による訴訟リスクが取りざたされる。エネルギー産業省のファリハ大臣やアラムコのナーセルCEOらは「予定通り実施」とするが、真相ははっきりしない。ムハンマド皇太子はニューヨークでの上場を望んでいるといわれるが、米国の反応が注目される。

 原油価格が予想以上に回復したため、一部のコンサルタントから「資金調達を含めた上場の緊急性は薄まった」との見解も聞かれる。しかし、改革の目玉案件であるアラムコIPOが延期になれば「ビジョン2030」の実現自体への信頼にもかかわる以上、可能な限り当初計画に近い形で実施されると考えられる。

 ムハンマド皇太子は16年1月の英誌「エコノミスト」のインタビューで「ビジョン2030」について、「石油立国から投資立国への転換」「富の源泉の埋蔵原油から現金への移転」と答えた。アラムコIPOによる国営石油会社資産の一部現金化はパリ協定発効など環境圧力の増大、電気自動車シフトの動きなどが背景にある。石油埋蔵量(資産)が将来、現金として回収できなくなる「座礁資産化」リスクのヘッジ、あるいは環境志向の投資家の化石燃料関連案件からの投資撤退「ダイベストメント」への対抗手段と理解すべきではないか。