2016年末、今後のエネルギー業界を揺るがす出来事が重なった。1つはサウジアラビアが主導するOPEC(石油輸出国機構)とロシアなど非加盟国が15年ぶりに協調減産で合意したこと。もう1つは米国内のエネルギー産業の活性化を目論むドナルド・トランプ氏が米国大統領に就任したことだ。サウジとロシア中心の産油国連合による需給調整は原油価格の下値を支えるが、トランプ政権の規制緩和などにより米シェール業者の価格競争力は高まり原油価格の上値は抑制されるだろう。将来の原油需要のピークアウトが予想される中、米・露・サウジの三大産油国が主導し、負担を分担する新たな国際石油市場のスキームが誕生しつつある。その石油「新三国志」を、石油業界に35年携わってきた著者が解説していく。
シリーズ
石油「新三国志」

完結
12回
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サウジアラビア国営石油会社、上場断念の謎
サウジアラビア国営石油会社、サウジアラムコの内外株式市場への新規株式上場が断念されたと一部メディアが報道。延期なのか中止なのか、またその理由はなぜか。諸説が飛び交っている。
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原油価格、上昇局面はもう終わった
6月22日のOPEC総会、OPECと非加盟産油国との合同会合では、サウジアラビアとロシアの主導によって協調減産の一部緩和を決定する可能性が高い。
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サウジ皇太子、就任9カ月後に米国訪問の意味
3月に行われたサウジアラビアのムハンマド皇太子の米国訪問には対イラン、原子力、国営企業の上場などさまざまな狙いがあった。ロシアも含めた3国は石油をめぐり、敵と味方が入れ替わる複雑な状況にある。
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プーチン出馬宣言と協調減産延長の密接な関係
サウジアラビアが主導するOPECとロシアが主導するOPEC非加盟産油国は11月末、原油価格維持のための協調減産を2018年末まで9か月間延長することを決めた。また、12月6日、プーチン大統領は次期大統領選への出馬を明言し…
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サウジ有力王族の大量拘束は賭けか、必然か
サウジアラビアが大きく揺れている。11月4日、有力王族・現職閣僚・有名実業家数十名が突然汚職容疑で拘束された。次期国王を目指すムハンマド・ビン・サルマン皇太子による権力基盤強化の動きと見られているが、歴史的に見れば“必然…
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石油で潤い、石油に呪われたベネズエラ
ベネズエラでは、原油価格の低迷とバラマキ財政のツケで、財政赤字が急速に拡大。年間1000%近いインフレが進行し、国民生活は破たん寸前にある。世界最大の石油埋蔵国であるのに、どうしてこのような事態を招いたのだろうか。
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フランスがガソリン車の販売を禁止する真の理由
フランス政府が2040年までに国内におけるガソリン車およびディーゼル車の販売を禁止すると発表した。CO2の排出削減が目的とされているが、自動車産業を抱える先進国がクルマの販売を禁止するのは初めてだ。その狙いを探った。
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全方位外交の罠、国交断絶に陥ったカタール
中東の小国、カタールが国交断絶という危機に陥っている。原因を探ると、中東におけるサウジ対イランという対立軸が明確になる中で、双方に挟まれた小国が独自路線で生き抜いてゆくことが、いかに難しいかを示している。
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サウジのエネルギー相が犯した痛恨のミス
石油輸出国機構(OPEC)は非加盟産油国と共に、今年6月末に期限を迎える協調減産を来年3月まで9カ月延長することで合意した。これで原油価格が上昇すると期待されたが、価格はむしろ下がった。その理由を解説する。
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原油価格が地政学リスクに反応しなくなった意味
米軍がシリアを空爆したにもかかわらず、原油価格はほとんど上昇しなかった。中東で地政学リスクが高まっても原油価格がほとんど反応しなくなって来ているのはなぜか。歴史的経緯から要因を考察した。
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サウジが恐れるのは「石油の枯渇」ではない
46年ぶりに国王が来日したサウジアラビア。一般に、「脱石油」を目指した経済改革は、原油価格の低迷を背景に、石油枯渇後の国家維持を目的とするものと説明されることが多い。この説明は間違いでないが、極めて不十分な説明である。
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米ロとサウジが主導する石油の新世界秩序
国際石油市場は、世界の石油生産のトップ3でもある、米国、ロシア、サウジの3か国が主導するとともに、需給調整を分担する新しい時代が始まったと言える。激動する市場動向を詳しく解説する。
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