最初は日本と同様の「味の素」を広めて、市場の成長とともに、鶏肉などをベースにした風味調味料「ロッディ」、日本の「CookDo」のようなメニュー用調味料「ロッディメニュー」、液体調味料「タクミアジ」、即席めん「ヤムヤム」など、現地のニーズに合わせた商品を次々と展開してきた。

 英調査会社のユーロモニターによれば、タイにおける「調味料類・ソース・ドレッシング」でのシェアは25%以上とトップで、競合であるユニリーバの約8%をしのぐ。

 味の素の進出国の中でも、タイは稼ぎ頭だ。2014年度の海外食品事業における調味料と加工食品の売上高では1000億円を超え、海外全体の約4割を占める。

 だが、タイ味の素は強い危機感を抱いている。味の素では、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、ブラジルといった重点5カ国の売上高を、2020年度までに2012年度比で2~3倍にするという目標を掲げている。タイについては、2倍するミッションが課せられている。現状の成長スピードでは、その目標に追い付かない。

 味の素アセアン本部長の高藤悦弘・取締役専務執行役員は、「味の素がアジアで築いてきた販売体制は財産だが、成功体験は時に仇となる。過去の体制を壊して、新たな成長に舵を切らねばならない時に来ている」と力を込める。

味の素アセアン本部長で高藤悦弘・取締役専務執行役員は、自身もインドネシアに駐在し、販路の拡大に力を注いだ経験がある。「コンビニエンスストアやスーパーなど新たな販路の拡大に貪欲にまい進していかなければならない」と力をこめる

 背景には、足元の状況は決して胸を張れる状況ではなかったという反省がある。その一例が、タイの缶コーヒー市場で圧倒的なシェアを握っている「Birdy(バーディー)」の“慢心”だ。