2016年2月29日号特集では、「シリーズ 真・世界企業への焦燥」の第1弾として、2020年までにグローバルトップ10入りを目指す日本を代表する食品メーカー、味の素の改革を追った。日経ビジネスオンラインの連動連載第1回は、味の素が創業100年を迎えた2009年からスタートした、西アフリカのガーナで展開している栄養改善プロジェクトを取り上げる。味の素のアミノ酸技術を活用し、現地の社会課題解決を目指すものだが、味の素にとっては単なるCSR(企業の社会的責任)活動ではない。実は、この活動の成否は、味の素が真のグローバル企業になれるかどうかの試金石となる可能性がある。そのワケは?

 まずは下の動画をご覧いただきたい。

ガーナ北部のワレワレ地区郊外の集落で味の素の「KoKo Plus(ココプラス)」を売る女性起業家たち。多くは幼児を持つ母親だ。味の素のガーナ栄養改善プロジェクトは、こうした女性たちに支えられている。

「♫ココプラス〜。子供はすくすく育つ~。♪いろいろな病気から身を守る~」

 昼下がり、静かな村一帯に明るい歌声が響き渡る。ここは西アフリカの中所得国ガーナ北部のワレワレ地区郊外にあるナマンゴというエリア。首都アクラから飛行機で約1時間かけて北部の都市タマレに移動し、そこからクルマで約1時間北上。さらに北東に30分ほど走った距離にある。一帯は茅葺き屋根と土壁の家が点在し、その先に広大な平野が広がっている。

 昨年10月、記者は味の素のガーナ栄養改善プロジェクトを取材するため、この場所を訪れた。今回は、その様子をルポルタージュ形式で紹介したい。

 この一帯の集落には、必ず首長がおり、外部の者が何かを始めるには、必ずひと言挨拶をしなければならない。今回の取材も例外でなく、集落に入るとまず、首長への挨拶を求められた。同行してくれた味の素ガーナプロジェクト担当者である上杉高志氏や現地のスタッフらと共に村長の自宅に向かう。

まず集落の首長に挨拶に行く。どうやら歓迎してくれたようだ。

 言葉の内容こそ理解できなかったが、どうやら歓迎してくれている様子。これでようやく、集落での取材が許されることになった。

集落にはとにかく子供が多い。
学校もある。カメラを向けるとパニック状態に。

栄養不足の子供を救う

 味の素はここガーナで、幼児向けの栄養改善プロジェクトを展開している。ガーナでは、乳児の栄養不足からくる発達遅延が社会問題になっている。ガーナでは一般に、乳児には「KoKo(ココ)」と呼ぶ離乳食を与えて育てる。発酵したコーンを基にしたペースト状の食べ物だが、これだけでは乳児の成長に必要なたんぱく質などの栄養素が足りない。

 そこで、味の素は自社のアミノ酸と大豆などの栄養素を混ぜた専用の粉末サプリメントを開発した。KoKoに混ぜて食べさせる、その名も「KoKo Plus(ココプラス)」だ。価格は日本円で1袋=約10円。貧しい家庭でも購入できる単価にして、多くの乳児の栄養改善に貢献することを目指している。

 そして冒頭に登場した女性たちは、ココプラスを地方の集落で販売する女性起業家たちだ。男性スタッフとともに家庭を訪問し、幼児の栄養改善の重要性を説きながらココプラスを紹介する。