前向きな動きがないわけではない。

 経産省の呼びかけのもと、日本の自動車メーカーなどが2014年4月に設立した自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)。その名の通り、エンジン(内燃機関)技術の向上を研究する機関だ。賛助会員として参加する部品メーカーを含めると、いまでは約75の関連企業がメンバーに名を連ねる。

 エンジンというとEVやFCVに取って代わられそうな印象も受ける。ただ、国際エネルギー機関の予測では2040年時点でも世界の新車のうち約8割はエンジンを搭載するクルマ。モーターと組み合わせたHVやプラグインハイブリッド車(PHV)など、同じ「エンジン搭載車」といっても顔ぶれは変わるが、それでもエンジン開発の重要性は当面変わることはない。

 「かつて、日本の自動車メーカーが一緒になって研究開発を進めるような場はなかった」。AICE運営委員会の木村修二委員長(日産自動車パワートレイン技術開発本部のエキスパートリーダー)は指摘する。AICEを設立したのは、前述のようにドイツ勢が官民連携で成果を出すなかで「このままでは差が広がってしまうという漠然とした危機感があった」から。そこに声をかけたのが経産省だった。

協調領域と競争領域を整理

 AICEでは、どこまでが共同研究の対象となる「協調領域」にあたり、どこからが各社の製品性に関わる「競争領域」かを整理する。たとえばエンジンが燃焼する際、内部で起きている物理現象についての研究は協調領域。その研究をもとに、加減速などどんな味付けをするかは競争領域、といった具合だ。

 研究には大学も研究室単位で加わり、自動車メーカーの技術者のパートナーとして学生らが実車試験などにあたる。「最近の学生はモーターやバッテリーを専攻したがることが多い。エンジン研究に興味を持ってもらえるきっかけを作れただけでも、AICE設立の意義は大きかった」。木村委員長は胸を張る。

 自動車産業に詳しいコンサルティング会社ローランド・ベルガーの貝瀬斉パートナーは「産官学の連携の芽が日本でも出始めたのは大きな前進。あとは自動車メーカー側が、共同機関に責任ある立場の技術者を拠出できるか。また共同研究の内容を持ち帰ってから自社の研究開発に落とし込めるかが問われている」と指摘する。

 経産省が次に着目するのが自動運転だ。「自動運転で頭脳の部分やそれを使ったビジネスを海外勢に押さえられたら、日本は大変なことになる。そういう危機感がある」と世耕弘成・経産大臣(詳しくはこちらを参照)。2015年2月には「自動走行ビジネス検討会」を設置し、自動運転社会の実現に向けての協調領域を8分野に整理した。

 経産省は「FCVの反省」を次に生かせるか。日本の官庁であることに間違いはないが、国内だけでなく、世界を見据える大局観が求められている。