「経産省がやると出ていけば、(観光庁などの)他省庁は頑なになるんですよ。例えば経産省が『民泊研究会』を作ってやるといったら、もう絶対に話が先に進まない。経産省がダイレクトに行って物事が遅くなるなら、行かないほうがいい。僕らは、シェアリングエコノミーを推進するという目的を達成すればいいんです」

 経産省幹部はこう話す。すくんでいるわけではなく、シェアリングエコノミーを推進するための、あえての戦術が「攻めない」というわけだ。しかし、それでは「攻める」連中にやられてしまう。

 22日、自民党は民泊新法の審査に入ったが、ホテル・旅館業界に近い議員からの物言いが相次ぎ、了承は持ち越しとなった。前述のように民泊業界の現場からはかなり厳しい法案なのだが、「宿泊提供の年間上限を30日以下にすべき」と主張する旅館業界を擁護する声が噴出した。

 さらに新法が定める年間上限の180日はあくまで、国としての上限。自治体はこの上限を条例によって低くすることができる建て付けになっているが、旅館業界に近い自民党議員からは「条例で制限できるという法的根拠を法律に盛り込むべき」といった声も出たという。

 これでは、「宿泊提供の年間上限はゼロ日」という自治体が出かねない。政府の規制改革推進会議が翌23日に開いた会合では「民泊の普及を阻害する可能性がある」との指摘があった。シェアリングエコノミー協会も同日、声を上げる。

 同協会は23日、「民泊新法の在り方に関する意見書」を公表。「住宅宿泊仲介業者(プラットフォーマー)は登録制にすべきではない」「宿泊提供の上限日数制限に反対する」「標識の掲示は家主の個人情報をさらし、家主自身の安全を脅かす」などと表明した。

 しかし、経産省は例によって黙したまま。現状、アクションを起こすことができていない。ところが、安穏としてはいられなくなる事態が海の向こうで起きつつある。

米国勢の圧力、尻ぬぐいするのは経産省

グーグルなどが加盟する米最大のIT業界団体、インターネット・アソシエーションが2月24日(米国時間)に公表した声明文

 米グーグルやフェイスブックなどが加盟する米最大のIT業界団体、米インターネット・アソシエーションは米国時間の24日、日本のシェアリングエコノミー政策を痛烈に批判する声明文を公表した。照準は、民泊新法。以下、内容を抜粋する。

 「今、ホームシェアリングのプラットフォーム事業者を規制する動きが広がっている。仮に誤った規制がまかり通れば、せっかくのイノベーションと経済成長が阻害され、後退しかねない事態につながる」

 「日本政府の方針には、登録されたプラットフォーム事業者に厳しい義務を課すことによって、日本国内、そして他国でホームシェアプラットフォームの運営を目指す事業者を排除する可能性が含まれている。これは競争と消費者の選択を大幅に制限するばかりか、イノベーションの妨げとなる」

 「日本の政府がシェアリングエコノミーを公的に支援すると表明しつつ、同時にプラットフォーム事業者の自発的な抑制を検討するという矛盾をはらんだ動きだ」

 これとは別に、「民泊新法の内容が、世界貿易機関(WTO)協定違反の疑いがあるとして、既に米大使館などが動いている」(業界関係者)という話も出てきた。エアビーのような仲介業者を締め出すような規制は、外資の自由参入を認めるWTO協定に背いている、という指摘だ。

 米国の環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱で、今後、米国との2国間貿易交渉が本格化する見込みだが、こうした「インターネットサービス業の排除」についても米国が槍玉に挙げる可能性がある。そうなれば、尻ぬぐいをさせられるのは経産省である。

 何もしないことが戦略と評価されるのか、それとも「不作為」と断罪されるのか。少なくとも新勢力は、経産省の「介入」を待望している。