次官在任期間が2年に至れば、霞が関では「大物次官」と呼ばれる。菅原氏と望月氏という2人の大物次官が漏らした嘆声。それは決してぼやきや諦めといった後ろ向きのメッセージではない。舞台が無限に拡大する中、広い視野、そして自分の軸を持って日本の未来のために思う存分活躍してもらいたい。そのような檄として受け止めるのが自然だろう。

 事務次官の菅原氏は若手への危機感を抱いて以降、実際に官僚たちの意識改革のために汗をかいている。その一つが「次官プロジェクト」と呼ばれる試みだ。

 次官プロジェクトは若手約30人を集めた勉強会のこと。「富の創造」「セーフティーネット」「安全保障」の3テーマについて、有識者を交えて議論する。目指すのは、20年先の世界を見越した日本の指針づくりだ。

あえて「出口」を作らない

 「日本、そして世界の状況はこれからの20年間でがらっと変わる。若手・中堅が次官や局長になった時に対峙する課題は全く違うのに、まだ過去の遺産だけで生きている。これまでの成り立ちから生じたという日本の特殊論だけで話を終えるのではなく、それを世界に誇る価値に変えていく。もしくは様々な価値がぶつかる中でどう日本の立ち位置を見定めるか、その指針にする。そういった大きなテーマについて、プロジェクトのメンバーは相当深い分析を進めています」

 次官プロジェクトがユニークなのは議論の「出口」を定めていない点にある。

 「放っておいたらこれまでの延長上の政策論しか展開できない。出口を決めると官僚らしく、器用にまとまって終わってしまうので。プロジェクトでまとまった内容はできれば運動論として展開していきたい。経産省や他省庁だけでなく、有識者、マスコミ、産業界、そして国民も巻き込む形で展開し、“自立回転”していくのが一番望ましい形だろうと考えています」

 「経産省政府」と呼ばれ、この世の春を謳歌しているように映る経産省。だが、実態に目を向ければ、まだ冬眠から目覚めていないような“お寒い”状況も散見される。日本が本当の意味で再興を果たすには、春を飛び越え、小説『官僚たちの夏』のような、国全体のことを第一に考える気概を持った官僚が次々と出てくる必要がある。

次官プロジェクトに参加する菅原事務次官。赤いパーカー姿で若手官僚らとざっくばらんに意見を交わす(左から4人目)
次官プロジェクトに参加する菅原事務次官。赤いパーカー姿で若手官僚らとざっくばらんに意見を交わす(左から4人目)
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