販売のカリスマはエレキの変化をこう見る

「ニッチ領域に直球勝負を挑む本気度を感じた」

 デジタル化でコモディティー化(汎用化)が加速する中、赤字体質から抜け切れずにいたソニーのエレクトロニクス事業。ソニーの平井一夫社長兼CEO(最高経営責任者)が打ち出したのが、「高付加価値シフト」だ。
 先陣を切ったのが、スマートフォンの台頭で市場そのものがなくなる可能性すらあったカメラ。2013年に35mmフィルム相当の「フルサイズ」のイメージセンサーを搭載したミラーレスカメラをいち早く投入し、一眼レフカメラが指定席だったハイアマチュアやプロ向け市場の市場を開拓しつつある。家電量販激戦区の栃木県で圧倒的強さを誇るカメラ店チェーン、サトーカメラの佐藤勝人専務はソニーのカメラ事業の成功を「キヤノンとニコンに直球勝負で挑んだ結果」と見る。

 この3~4年で、ソニーのデジタル一眼カメラは目に見えて良くなりました。よく言われていますが、「フルサイズ」のミラーレスを出せたのはやはり大きい。キヤノンやニコンは、既存の一眼レフの顧客を失うのを恐れて、フルサイズには手を出せなかったですからね。これに対してソニーは(旧ミノルタから一眼レフ事業を買収したがシェアは2社ほど高くなく)身軽だったから、チャレンジできたといえます。ハイアマチュアやプロ向けというニッチ市場に対して「直球勝負」を仕掛けた。勝ちに来ようとするソニーの本気度を感じます。

 以前、中国を訪れた際、ソニーのミラーレス一眼カメラが中国の若者から支持されているのを目の当たりにして驚きました。日本で“カメラ女子”の人気を集めたオリンパスのような存在なのでしょう。背景には、ソニーブランドの強さと、インターネット販売が主流の中国でうまく宣伝し若者の心をつかんだことがあると見ています。

 日本でも、カメラにおけるソニーのプレゼンスは高まっています。だからこそ、カメラを売って終わりではなく、私たちのような販売店と一緒になって、写真を撮るという「文化」の醸成も担っていってほしいですね。

「テレビを起点に“リンク買い”につなげるのがうまい」

 エレキの中核となるテレビでも、高付加価値路線は奏効している。かつて10年にわたって赤字を出し、不振の象徴になっていたテレビ事業は構造改革の結果、2015年3月期に黒字化を達成した。ヨドバシカメラマルチメディアAkiba(東京都千代田区)TVチームの小林和也マネージャは「カメラやゲームなどと合わせて使うことで楽しみが広がる点をうまく訴求している」と見る。

ヨドバシカメラマルチメディアAkibaのテレビ売り場(写真:的野弘路)
ヨドバシカメラマルチメディアAkibaのテレビ売り場(写真:的野弘路)

 ソニーのテレビ「ブラビア」は、フルハイビジョンの4倍の解像度を持つ「4K」が登場したころから変わってきたと感じています。かねてからのデザインの斬新さに加え、それまでのテレビにはなかった、サイドスピーカーを搭載したテレビも打ち出しています。

 お客さんの反応を見ていると、ブラビアは、昔からソニーファンだった年配層と、「アンドロイドTV」などのネットメディアを見たい20~30代に人気があるようです。アンドロイドTV機能については、“スマホと同じ”を前面に出して若者に訴求しています。

 また、プレイステーション4(PS4)を楽しみたい層にも人気です。色調を広げるハイダイナミックレンジ(HDR)はゲームに向いているのですが、ブラビアの販売POPにはあえて「4K/HDR」と表示しています。デジタル一眼カメラ「α」のユーザーにも、4Kは受けが良いですね。ソニーのテレビの上位機種にはハイレゾのスピーカーが付いており、映画や音楽を楽しみたい人にも強く訴求しています。

 そう考えると、テレビ「ブラビア」、スマートフォン「エクスペリア」、デジタル一眼カメラ「α」、ゲーム「PS4」と、自社製品を連結させて売るのは上手な印象です。“リンク買い”ができるのは、ソニーならではといえるかもしれません。

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