引き渡しイベントで号泣する開発メンバーも

 もちろん際限なくコストをかけたわけではない。「開発予算の枠を意識しつつ、『こういうものを作りたい』という設計者の気持ちを込めてきた」と電気設計を担当した伊豆直之氏は強調する。

 設計を工夫したり、強度を保ちつつ部品点数を減らしたりと、予算枠に収めながらクオリティーを高める現場の努力が、税別で19万8000円という本体価格に反映されている。もし、コスト度外視で開発を進め、もっと高い価格で売り出していたら、17年11月1日の初回の予約販売で、わずか30分ほどで完売することもなかったかもしれない。

 そして迎えた18年1月11日。戌年の「1(ワン)」が並ぶこの日、ソニーは本社のエントランスホールに約40人の購入者を招き、aiboの入った「コクーン」を引き渡すセレモニーを開いた。
 「かわいい!」──。愛くるしい振る舞いをするaiboを目にした「オーナー」から上がる感嘆の声。「最も達成感を感じたのは、『この日を待っていた』というお客さんの声を直に聞けたとき」と伊豆氏は話す。開発チームのあるメンバーは、イベントの様子をそばで見ながら号泣していたという。

2018年1月11日、ソニー本社でaiboの引き渡しセレモニーが行われた。先代アイボを抱くオーナーの姿も

 開発メンバーは今、こう振り返る。
 「大人が何人も集まって、朝から晩まで犬について考えるなんてつくづく変な会社だと思う。でも、そこも含めてソニーは夢がある」(森田氏)。
 「技術者自身がワクワクしながら、お客様にワクワクを提供していきたい」(石橋氏)。

 好調な業績と相まって「ソニー復活の象徴」と評されるaibo。センシングからメカトロニクス、AIまでソニーが持つあらゆる技術を結集して生まれた。単にハードウエアを売り切るだけでなく、売った後も周辺機器やサービスで稼ぐ「リカーリング」と呼ぶビジネスモデルを確立する使命も帯びている。

 真面目ナル技術者ノ技能ヲ、最高度ニ発揮セシムベキ自由闊達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設――。aiboの開発チームと平井社長を中心とするマネジメント層がaiboの開発を通じて目指したのは、創業者の井深大氏が設立趣意書に記した「技術者の理想郷」をもう一度、取り戻すことだったのかもしれない。