自ら動いたら「大吉」

 そんな中、おみくじで占うなら「自ら動いたら大吉」だろう。企業は慢性的な人手不足に加え、将来にわたって人材を確保できる展望が描けないことから、新卒一括採用だけでは足らず、中途採用の拡大を一層進めていくことになる。優秀な社員ほど、自ら積極的に動けば有利な転職ができる。そんな年になりそうだ。もちろん、猛烈に残業させられる伝統的な働き方の企業からは、どんどん人が逃げ出すことになる。

 一方、企業経営者も優秀な人材を集めようと思えば、待遇を改善しなければ難しい。今いる優秀な社員をつなぎとめるにも、処遇改善は不可欠だ。もちろん限られた人材の獲得合戦なので、同じ業界なら早く経営者が動いた企業が「勝ち」だ。

 ただ給料を引き上げるだけでは人件費が増えるだけで、経営にはマイナスになってしまう。考える経営者ならば、無駄な仕事を省き、収益性の高い事業へ人材を集中させることで、利益を上げようとするだろう。つまり、根本的に働き方を変える方向へと動き始めるのだ。

今年は「人手不足倒産」が増える

 こうした環境の中で、「自ら動かなかった」場合には結果は真逆になる。「凶」である。

 働き方を変えずに放置した結果、優秀な人材が勤務時間の長さに辟易して他社へ転職したとする。そうなれば、当然、残った人の負担は増え、ますます残業時間が長くなる。ある一点を超えた段階で、続々と人が辞め、その会社の事業が滞ることになる。実際に、大手から中堅中小まで、こうした事態が静かに進行している。体力のない企業では、今年は「人手不足倒産」が増えることになるだろう。

 働く社員の立場からみても同じ事が言える。さっさと見限らなかったために、仕事がさらに厳しくなり、ストレスも溜まる。多少残業代が増えたとしても、満足度は上がらないだろう。

 このタイミングで自殺者を出した電通のイメージ悪化は深刻だ。働き方を抜本的に変えた姿をアピールしないと、長期にわたって優秀な人材を集めることができなくなるに違いない。ほとぼりがさめれば人気企業に戻れるなどと思っていたら取り返しのつかないことになるだろう。

「ROE経営」が再び注目される

 働き方を根本から変えるという決断を経営者が下した場合、企業経営のあり方も根本から変わる。利益率の高い事業に特化し、不採算事業や競合他社の多い事業は売却したり廃止したりする。欧米では当たり前に行われている経営スタイルだ。株主資本に対する利益率をみる「ROE経営」などが再び注目されることになる。

 実は安倍内閣はアベノミクスの柱のひとつとしてコーポレートガバナンスの強化を進めてきた。その目的は「日本企業に稼ぐ力を取り戻させる」ことで、ROEを欧米企業並みに引き上げるとしていた。働き方改革を実現するには、もっと企業に儲ける経営をしてもらわなければならない。その点で、安倍内閣が掲げる「ガバナンス改革」と「働き方改革」の方向性は整合的なのだ。

「同一労働同一賃金」は働き方改革の入り口に過ぎない

 政府が旗を振る「同一労働同一賃金」や「最低賃金の引き上げ」などは働き方改革の入り口の政策に過ぎない。最終的には効率的に働く社員に欧米企業並みの高給が払えるような、きっちり儲ける働き方を実践できるような制度整備や企業経営のあり方が問われることになる。