ベースアップが続くが、実感は乏しい

 2012年末の第2次安倍内閣発足以降、首相は繰り返し企業経営者に「賃上げ」を求めてきた。2017年までに4年連続でベースアップが実現したが、まだまだ働き手には賃金上昇の実感が乏しい。

 安倍内閣が掲げる「働き方改革」では、長時間労働の削減をひとつの柱にしている。だが、残業時間を減らせばその分、時間外手当の減少につながることになりかねない。そのためにも「本体」の賃上げが不可欠になっている。経団連の経労委報告にも、「時間外手当の減少分を社員に還元するのが望ましい」という趣旨の文言が書き込まれ、賞与の増額や新たな手当の創設なども提案される見通しだという。

 安倍内閣は「3%賃上げ」という“口先介入”だけでなく、賃上げする企業への側面支援も決めた。12月14日に自民党と公明党が税制改正大綱を決定したが、3%以上の賃上げを実施した企業に対して法人税をさらに引き下げることとした。法人税の実効税率は2018年度に29.74%に下がるが、新たに決まった優遇措置の適用を受ければ、25%程度まで下がることになる。法人税率25%は経団連が求め続けてきた「目標数値」でもある。政府がこれに応えたことで、財界としても賃上げに動かざるをえなくなったという事情もある。

 2018年の春闘は5年連続でベースアップが実現する公算が大きい。もっともこうした「賃上げ」はまだまだ大手企業主体で、こうした流れが中小企業などに波及していくかどうかが焦点になる。

 その追い風が、深刻化する人手不足だ。少子化に加えて景気が底入れし始めたことで、特に中小企業は人材採用で苦戦を強いられている。優秀な人材を確保するためには、待遇改善、とくに大手に比べて低い賃金水準の見直しが不可欠になっている。賃上げしなければ人材を確保できなくなっているのだ。

 厚生労働省が12月1日に発表した2017年10月の有効求人倍率(季節調整値)は1.55倍と前の月の1.52倍を上回り、1974年1月以来43年9カ月ぶりの高水準になった。バブル期を上回り、高度経済成長期に匹敵する人手不足時代に突入しているのだ。

 そうした中で、賃金を引き上げられない生産性の低い業種は人材が確保できず、慢性的な人手不足になっている。外食チェーンでは深夜営業や年末年始の営業を縮小したり、店舗閉鎖に追い込まれたりする企業が登場している。経営者からすれば、いかに人手を確保するかが、事業を維持・拡大するうえで、最大のポイントになってくるだろう。

 こうした追い風の中で、2018年は多くの人たちが給与増が実感できるようになるに違いない。毎年続いてきた厚生年金保険料の引き上げも2017年秋で終わり、減り続けてきた可処分所得が下げ止まる。給与が増えれば、可処分所得が増える可能性がある。そうなれば、不振が続いてきた消費におカネが回る。

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