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外国人労働者の受け入れ拡大が、多くの職場で課題となる(写真:PIXTA)

「抵抗勢力」だった法務省が「折れた」理由

 外国人労働者の受け入れ拡大を狙った出入国管理法の改正案が臨時国会で成立した。衆参両院の法務委員会での審議時間が合計38時間にとどまったことから、審議が不十分だとして日本維新の会を除く野党が反対に回った。

 だが問題は審議時間よりも「法案の中身がスカスカ」で、後は国会審議が必要ない「政省令」で定めるとしている点だ。「政府への白紙委任」だと野党は批判しているが、それよりも所管官庁である法務省が、現場の実情を把握してきちんとした「政省令」を作り上げることができるのかどうかが、最大の懸念事項だ。

 「与野党の国会審議がかみ合わなかったのは、法務省の問題が大きい。そもそも外国人労働者拡大に反対してきた役所が旗振り役になったのが間違いだ」

 経済産業省の大物OBはこう指摘する。法務省の一部局である出入国管理局は、まさに入国の「管理」を行うのが任務の部署だ。水際で不良外国人の入国を阻止し、不法就労や在留期限の超過など法を犯した外国人を探し出して強制退去処分などを行うことを長年、主要任務としてきた。

 当然、外国人の在留資格を緩めることには基本的に反対で、内閣官房が中心になって検討してきた外国人労働者の受け入れ拡大では、常に「抵抗勢力」だった。

 その法務省が「折れた」のは簡単な話だった。安倍晋三首相官邸が中心となって外国人材の受け入れ拡大を決め、「経済財政の運営の基本方針」いわゆる「骨太の方針」に盛り込まれて閣議決定された段階で、勝負は決まっていた。法務省の出入国管理局を格上げして出入国在留管理庁を設置することも決まったが、内閣の方針に法務省が抵抗を続ければ、出入国在留管理庁は内閣府の傘下に置かれることになったはずだ。もともと外国人がからむ役所は数多く、省庁間の調整が必要だから、法務省の下に置く道理はなかった。

 内閣に、自分たちの権益やポストを失いたくない霞が関官僚の行動パターンを見透かされたわけだ。法務省が「折れ」れば、局が庁に格上げされ、次官級の「長官」に加え、次長や審議官といったポストが新しく増える。しかも、大幅な増員も可能になる。

 要は、組織の拡大という「アメ」が欲しかったというのが本音で、外国人労働者を増やしたいと考えているわけではない。だから、法案の審議が「気が抜けた」ものになったのは、当然といえば当然だ。