「プロ経営者」の数はまだ少ない

 ここで問題になるのが、グローバルな自動車連合のトップを務められるだけの力を持つ経営者が日本にはいないこと。打診されている経済界も自信をもって推薦できる人物が見当たらず頭を抱える状態になっている。

 ここ10年ほど日本でも「プロ経営者」をトップに据える企業が出始めているものの、まだまだ数は少ない。日本コカ・コーラの社長・会長を務めた魚谷雅彦氏が資生堂の社長に就任したほか、ローソンの社長・会長を務めた新浪剛史氏がサントリーホールディングスの社長に就任するなど事例は出ているが、最近では短期のうちに退任する例も目立っている。

 プロ経営者としてカルビーの会長兼CEOを務めた松本晃氏が、RIZAPグループのCOOに招かれたものの、わずか半年でCOOを外れた。アップル日本法人の社長から日本マクドナルドホールディングス社長を務め、ベネッセホールディングス会長兼社長に転じていた原田泳幸氏が退任したほか、LIXILグループに社長として招かれた藤森義明氏も実質的に解任されている。まだまだ日本には「プロ経営者」がほとんど存在しないし、経済界で「プロ経営者」が活躍できる余地も少ない。

 一方で、経営破綻の危機に直面した東京電力のトップ選びや、官民ファンドのトップ選びなどで、政府が経済界に人材選びの協力を求めたケースもあった。ただ、こうした政府や「公益」がからむ企業などの場合、他の日本企業との調整など、極めて日本的な能力が求められるため、「財界の顔」的な大物財界人に打診がいくことがしばしばだった。

 今回の場合、日本人を選ぶに当たってのハードルはかなり高い。ルノー・日産・三菱のアライアンス全体の自動車販売台数は2017年に世界でトップに躍り出ている。ドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループやトヨタグループを上回る巨大自動車グループを統率できるグローバル水準の経営人材が日本にいるのかどうか。また、フランスが中心のルノーの傘下にはルーマニアのダチアや、韓国サムスンとの合弁であるルノーサムスンなどもあり、グローバル経営を仕切る能力が不可欠だ。

 「部長級を選ぼうとしたら全員が外国人になってしまう。もちろん日本人に“げた”をはかせてポストに付けているが」

 グローバル経営を一気に進めている日本の大手企業のトップはこう嘆く。日本人の40歳~50歳台の力がまったく国際水準に達していない、というのだ。

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