日本企業の役員は、経営のプロというより社内政治の勝者

国内企業で転職してキャリアアップする、という事も少ないですね。

薮野:まだまだ転職することに、マイナスイメージがありますから、人材の流動化が進んでいません。企業は自社の中で選抜システムを作っているわけですが、ポストで採用しているわけではないので、ローテーションが頻繁に行われます。じっくり5年とか7年とか同じプロジェクトにかかわって実績を上げさせるといった仕組みになっていません。

 取締役にしても経営のプロという認知度は低く、社内ポリティクスに打ち勝って昇進し、たどり着くポストという色彩が強いですね。人材の流動化が進んでいる欧米では、経営幹部を選ぼうとすれば、大きなプールの中から探せるわけですが、そもそも日本にはそうしたプールがほとんどありません。

社内政治に巻き込まれ干されている人に会いに行く

薮野さんはどうやって人材を探し出すのですか。

薮野:先方から会いたいと言われて会うケースは少ないですね。こちらから、これは、という人に会いに行きます。ただ、日本企業の場合、役員になる一歩手前の部長さんには一番会いにくいですね。子会社に転出したり、ラインから外れて本人が「ゲーム・オーバー」だと自覚した人には会えるのですが、まだまだ役員になる可能性があると思っているうちは、私たちに会うのをためらいます。

 日本企業の人事はさすがだと思うのですが、やはり専務や常務になる人は、立派だと思うことが多いですね。そんなこともあって、本来は偉くなってしかるべきなのに、社内ポリティクスに巻き込まれて干されているとか、飛ばされたという人の話を聞いたら、積極的に会いに行きます。俺はこんなポストで終わる人間ではない、「何クソ」と思っているような人は、転職してもバリバリ仕事をこなします。50代になると、燃え尽きたというか引退モードになっている人も少なくないのですが。

 欧米企業でも後継経営者の候補を社内で3人ぐらいに絞っておき、最後の最後でひとりに決めるというケースがあります。そうなると、残りの2人は他の企業のトップにあっという間にスカウトされる。日本企業でもそうした事が起こればよいのですが、日本の場合、年齢が圧倒的に高い。最後の選別が終わったら60歳近いというケースが少なくなく、実際にはそれから別の会社に移るというのは難しいわけです。それに日本企業の場合、同業のライバル会社に転職するというのは難しいですね。

日本企業では経営者がどんどん小粒化していく

最近は、日本企業でも経営幹部を中途採用するケースが増えているのではないでしょうか。エグゼクティブ・サーチは根付かないのでしょうか。

薮野:ひとつは給与体系の問題が大きいですね。年功序列を前提とした給与体系の中で、専門人材に高い報酬を支払うことがなかなかできません。米国の経営幹部なら年俸1億円ぐらいは当たり前ですが、日本では5000万円を出すような感覚がない。「それではうちの社長より高くなってしまう」といった具合に、常に内向きの議論になるのです。これこれの専門性を持っていて、価値を生み出す人材のマーケット・バリューがいくらなのか、といった視点に立てないわけです。