20代、30代は、重要な助走期間。この期間に仕事に打ち込み、成功体験を持つことが大切。

 日本企業と外国企業ではビジネスマンの働き方やキャリア形成のあり方が大きく違う。外資系企業が日本に進出する際、日本の拠点の幹部をヘッドハントするケースが多いが、なかなか日本でふさわしい人材を見付けるのに苦労するという。40代で経営力を身に付けた人材が伝統的な日本の大企業の中には育っていないからだ。

 企業の経営者や管理職の人材をあっせんする「エグゼクティブ・サーチ」の仕事に20年にわたって携わるスペンサースチュアートの薮野紀一パートナーに聞いた。

50歳を過ぎ、先が見えてから動くのでは遅い

転職を前提に薮野さんが会う人はどんな人材が多いのでしょうか。

薮野紀一(やぶの・としかず)氏
スペンサースチュアート・パートナー
1967年大阪生まれ。1990年に慶応大学法学部卒、大和証券入社。1995年にノースウエスタン大学ケロッグ校でMBA取得。1996年に大和証券を退社し、ラッセル・レイノルズ・アソシエイツに入社、経営人材仲介のコンサルタントとなる。1999年にスペンサースチュアートに移り、2002年からパートナー。

薮野:ほとんどが高学歴で東大、京大、慶応、早稲田、海外の一流大学などを出て、その多くが大学院でMBA(経営学修士)や理科系の修士課程などを終了した人です。中には留学を終えて30代前半で自発的に転職しようという人もいますが、多くは50歳を過ぎてから。今いる会社で先行きが見えた段階でようやく動き出すわけです。マーケット・バリューがもっと高いうちにお会いしたかったな、というケースが少なくありません。転職市場で、自分自身が置かれている状況を分かっていない人が多いですね。

それはなぜでしょうか。

薮野:伝統的な日本の大企業に勤めるサラリーマンのメンタリティーは、終身雇用を前提に同じ会社で30年以上にわたって働く事でした。最近はそれが崩れたと言われていますが、メンタリティーは変わらない。欧米では30代の課長レベルでも損益に責任を持たされる、若くして経営者としての経験値を上げる訓練を受けているのです。伝統的な日本企業の執行役常務ぐらいまでなった人でも、欧米のグローバル・カンパニーが本社の役員待遇で採ることはまずありません。子会社の経営を立て直したとか、部門の利益を何倍にしたといった経営者としての実績を示せない事が多く、われわれとしても推薦状が書けないのです。