安倍首相の“建前”に野党は反発

 増加分を資格別にみると、留学生が4万9947人増、技能実習が4万6680人増となっている。こうした実態から見ると、新資格で4万人という数字はかなり過小で、仮に4万人に資格付与をとどめようとすれば、「狭き門」になる。留学生や技能実習生の制度を使った実質就労が今後も続くということだろう。逆に実勢に合わせて新資格を授与すれば、10万人近い外国人労働者が入ってくる可能性も十分にありそうだ。

 国会論戦で野党も外国人の受け入れ拡大自体には正面切って反対していない。問題視しているのは、安倍晋三首相があくまで「いわゆる移民政策とは違う」と言い続けていることだ。国連の定義では、1年以上その国に移住していれば、「移民」で、5年の在留資格を持って働いている外国人は立派な移民ということになる。ましてや「特定技能2号」の資格で在留する外国人は問題を起こさなければ事実上無期限で日本に居住でき、家族も帯同することができる。これを「移民」と呼ばずして何というのだろう。

 逆に「移民ではない」といい続けることで、新たな問題が起きる。「特定技能1号」の資格では家族帯同も許されないし、永住権取得のための通算在留年数にもカウントされない、という。「5年たったら帰っていただく」というのが建前なのだ。つまりあくまでも「出稼ぎ」扱いで受け入れると言っているわけだ。

 そうした状況に置かれた外国人が、日本語を真剣にマスターして、日本社会に適合していこうと考えるかどうか。期間中だけ割の良い儲け仕事で稼いで帰ろうと考えるのが人情だろう。それこそ、社会不安の種をまくようなものだ。きちんと長期にわたって日本に住むコミュニティーの一員になってもらう事が、社会の混乱を起こさないためにも必要だろう。

 安倍首相は国会での質問に答えて、条件を満たせば永住の道が開けることになる「特定技能2号」を経ての永住権取得について「ハードルはかなり高い」と答えている。そう答えざるを得ないのは「移民政策を採ることは考えていない」といい続けるからだ。日本に永住してもらわなくて結構、あなたたちは所詮「出稼ぎ」です、と首相が言う国で、本気で社会の一員になろうとする外国人がどれだけいるだろうか。

 「外国人が入ってくると日本人の仕事を奪われる」という反対意見もある。もともと外国人の受け入れに反対派が多い自民党内にもそうした議論はあったが、法案提出に向けた党内手続きは予想以上にスムーズだった。というのも自民党議員は支援者である地元の商工業者から、さんざん人手不足の話を聞かされ、外国人受け入れ以外に道がないことを理解しているからだ。心情的には受け入れ反対でも、支援者の声には逆らえないわけだ。

 実際、留学生がたくさんいる都市部よりも、地方都市や農山村の方が人手不足は深刻になっている。コミュニティーの崩壊寸前になっている地域もあり、「来てくれるなら外国人でも大歓迎」という声が少なくない。かつて農山村でブームになったフィリピン人花嫁が地域に定着し、外国人アレルギーが薄れているという現実もある。