働き方改革の実現は「2020年」から?
高度プロフェッショナル制度は国会に法案が出された後も、2年間も審議すらされずに棚ざらしになってきた。政府が高度プロフェッショナル制度を諦めて残業時間の上限規制だけを法改正するとは考えにくい。そうなると、まったく労働基準法改正はできず、「働き方改革」は掛け声倒れに陥る懸念も出てくる。
年内に臨時国会が開かれなかったり、開かれても審議時間が不十分だったりして、来年の通常国会に法案提出がずれ込んだ場合、予算成立が優先されるため、労働基準法改正案の審議は4月以降になる可能性が出てくる。そうなると仮に成立しても通常国会会期末の6月か、会期延長後の夏場ということになり、2019年4月からの法施行は難しくなる。鳴り物入りで議論されてきた働き方改革も、第一歩を踏み出すのが2020年から、ということになりかねない。
そうこうしている間にも、世の中で人手不足は深刻化する。残業の上限規制が入らなければ、過労死や過労自殺が一向に減らないということになりかねない。また、長時間労働が今以上に社会問題になれば、企業も世の中の批判を恐れて残業時間圧縮などに努めることになる。新入社員が過労自殺した電通などでは残業規制が厳しくなり、業務に支障が出始めている、とされる。非正規社員を正社員化したり、中途採用を実施するなど、採用に力を入れているが、なかなか人材が集まらない状態が続いているようだ。
時間ではなく、成果で評価する仕事については、経営者ばかりでなく労働者からも「時間によらない働き方」を求める声があるのも事実。高度プロフェッショナル制度の導入は働き方の多様化にも不可欠だとみられる。
実際、高度プロフェッショナル制度の対象になる年収1075万円以上の従業員は、全体の1%にも満たない。管理職はそもそも残業規制の対象外なので、社員で1075万円を超す報酬を得ている人は、日本企業ではごく一部ということになる。
連合などはいったん制度が導入されれば、1075万円の基準が引き下げられ、誰もが残業規制の対象外にされる、と主張する。だが逆に、高度プロフェッショナル制度を適用するために、1075万円以上に給与を引き上げる例が増えれば、従業員の給与を大きく引き上げることになる可能性もある。
いずれにせよ、国会が早期に開催され、労働基準法改正に向けた審議が始まることを期待したい。
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