衆議院選挙の結果を受け、記者会見する安倍晋三首相(写真=AP/アフロ)
衆議院選挙の結果を受け、記者会見する安倍晋三首相(写真=AP/アフロ)

年内に臨時国会は開かれるのか?

 自民党の完勝で終わった衆議院議員総選挙による新しい議席配分で、今後の国会運営はどうなるのだろうか。

 衆議院の新勢力は自民党が284議席と解散前の議席を確保。公明党は議席を減らしたが、自公を合わせた与党の議席は313議席と3分の2に当たる310議席を超え、参議院で否決された議案も再可決できる安定議席を得た。これで、どんなに野党が反対しようとも懸案の法案をどんどん通して、アベノミクスを力強く推進することになるのかと思いきや、どうも情勢は異なっている。

 総選挙後の決まりである首班指名を行う特別国会は11月1日に召集される見込みだ。安倍晋三首相が再選されたのち組閣が行われ、第4次安倍内閣が発足する。8月に内閣を改造したばかりなので、閣僚は全員が再任される見通しだ。党役員も引退した一部議員のポスト以外はそのままになる可能性が高い。

 問題はいつ本格的な国会での審議が始まるか、である。今年は臨時国会が開かれたものの、冒頭で解散となったため、首相の施政方針演説や各党の代表質問などは行われていない。特別国会の会期は8日までになりそうで、本格審議する時間はない。トランプ米大統領の訪日など外交日程があり、臨時国会を開くとしても11月中旬以降にずれ込む模様だとみられている。

 国会が開かれれば、野党による森友学園問題や加計学園問題の追及が再び始まるのは明らかである。安倍首相からすれば、できればほとぼりが冷めるまで、国会は開きたくない、ということなのかもしれない。来年1月の通常国会まで国会を開かない、という声も聞こえてくる。

 安倍内閣はTPP(環太平洋経済連携協定)が懸案だった2015年にも秋の臨時国会を見送っている。憲法53条には、「衆参いずれかの4分の1の議員の要求があった場合、内閣は召集を決定しなければならない」という規定があるが、「いつまでに」という規定がどこにもないために、次の通常国会まで召集しないというのが慣例のようになっている。2015年秋にも野党側が憲法53条に基づいた開会要求を行ったが、安倍内閣は無視している。

 次の国会の焦点は安倍首相が最重要課題としてきた「働き方改革」を巡る法改正である。いくら会議で「改革方針」を決めても、法律を通さなければ、何事も始まらない。

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