外国人摘発に焦点を当てたテレビ番組が相次ぐ

 日本政府も方針転換に当たって、そうした外国人の定住を前提にした受け入れ策を整備するはずだった。入国管理局を格上げして「入国在留管理庁」を来年4月にも発足させる計画だが、「在留」という言葉を加えて「入国管理」の水際規制だけでなく、在留中の外国人のサポートを行う官庁への脱皮を見込んでいる。

 ところが、旧来の法務省の入国管理行政は、水際で問題外国人を「排除」することや、不法滞在している外国人を「検挙・送還」することにウエートが置かれてきた。外国人を「生活者として受け入れる」という視点が欠落しているのだ。

 9月から10月にかけてテレビの民放各局で、こうした入国管理局の外国人摘発に焦点を当てた番組が立て続けに流れた。入国してくる外国人は問題外国人ばかりだという誤った印象操作になりかねないとして、批判の声が挙がっている。あまりにも各局立て続けだったことから、入国管理局側が広報として売り込んだのではないかという疑惑まで生じた。これまでの法務省入国管理局に、外国人の日本での生活を支えようという視点がほぼない事を如実に物語っている。局が庁に格上げになったとして、外国人の定住促進に向けたドイツ型の政策が採られるかどうか現状では危うい。これもひとえに、安倍首相が移民ではないという建前に固執していることが根本原因と言える。

 いずれにせよ、法律が通れば、これまで単純労働とみなされてきた職業分野にも外国人労働者が大量に入ってくることになる。実質的な移民受け入れへの政策転換には、自民党内からも異論が多い。単純労働に外国人が入ってくることで「若者の仕事が奪われる」と目くじらを立てる議員もいるが、これは的外れだろう。高齢者の就業が増えたことで若者の仕事が奪われたかというと、そんな問題は起きていない。それほどに人手不足は深刻なのだ。

 だが、優秀な外国人が増えてくれば、それだけ日本人の若者に職業人としての高い能力が求められるようになるのは事実だろう。流ちょうな日本語を話し英語も上手な中国人留学生は数多い。彼らが高度人材として日本社会で本格的に活躍し始めれば、出来の悪い日本人学生は就職活動で負けることもあり得るわけだ。単純労働の世界よりも、高度人材の方がより競争は激しくなる。

 また、単純労働に近い分野でも、彼らを「安い労働力」とすだけならば、そのしっぺ返しが日本人に及ぶ。そうした分野の給料が上がらなければ、その余波は、そこで働く日本人にとっても他人事ではない。むしろ外国人労働者にも同一労働同一賃金を徹底し、最低賃金を企業に守らせることが重要になってくる。法律が通れば、来年4月を機に、日本の労働界は急速に変化し始めることだろう。