人手不足はこれからが「本番」

 ところが、その後、5分野以外の業界団体などから「うちも加えて欲しい」という強い希望が寄せられた。人手不足にあえいでいるのは5分野に限らない。臨時国会を前に報道されたところでは、「建設業」、「造船・舶用工業」、「介護」、「農業」、「宿泊業」の5分野に加え、「ビルクリーニング」、「素形材産業」、「産業機械製造」、「電気・電子機器関連産業」、「自動車整備業」、「航空業」「漁業」、「飲食料品製造業」、「外食業」の9分野が加わっている。

 コンビニエンスストアなど、今でも外国人留学生アルバイトを大量に雇用している業界からも希望は出されているが、小売りにまで対象を広げれば、ほぼ全業種に広がってしまう。外国人労働者に「単純労働」を全面解禁することになるわけだ。

 政府が外国人労働者の全面解禁に事実上踏み切る背景には、言うまでもなく深刻な人手不足がある。これまで高齢者や女性の就業率の上昇が続いてきたにもかかわらず、有効求人倍率は高度経済成長期並みの高水準が続いている。

 だが、働く人の数の増加はいつまでも続くわけではない。人口減少が本格的に始まっており、若年層の働き手は減少している。安倍首相の「1億総活躍」や「女性活躍推進」によって、65歳以上の就業者は今や800万人に達し、15歳から64歳の女性の就業率も初めて70%に乗せた。

 しかし、人口の大きな塊である「団塊の世代」は2022年に後期高齢者(75歳)に達し、嘱託などとして働いていた職場からの「引退」が本格化し始めるとみられる。そうなると65歳以上の就業者数の増加はそろそろ見込めなくなってくる。つまり、人手不足はこれから「本番」を迎えるわけだ。

 移民政策は採らない、と言いながらも、事実上の移民受け入れに転換したのは、そんな差し迫った理由からだ。

 もっとも、安倍首相が「いわゆる移民政策は採らない」と言い続けていることで、将来に禍根を残す懸念が生じている。移民政策は採らないということは、受け入れる外国人労働者は「いずれ本国に帰ってもらう」ことが前提ということになる。将来にわたって日本に定住し、社会を支える役割を担ってもらうという発想を「封印」しているのだ。

 これは1950年代から60年代にかけてドイツがトルコなどから大量の労働者を受け入れた「ガストアルバイター」、お客さん労働者を彷彿とさせる。彼らは本国には帰らず定住していったが、ドイツ社会の底辺を形成し、様々な社会問題を起こした。「移民問題」と言った時に日本人が想像する問題は、そんな半世紀前のドイツの受け入れ政策に原因があった。

 2000年代になってようやくドイツは自らを「移民国家」であると定義しなおし、外国人の権利保護と同時に「ドイツ市民」となるためのドイツ語教育や生活ルールや法律などを教える公民教育を義務付け、実施するようになった。