「新卒で企業に入れば一生安泰」は幻想

 現在、年金の支給開始年齢は徐々に65歳に引き上げられている。継続雇用制度が65歳まで義務付けられたのは、定年退職しても年金が受け取れず「無収入」になる人を無くそうとしたからだ。将来、政府は年金支給開始を70歳にしたいと考えれば、当然、継続雇用制度の年齢を引き上げなければ「無収入」者が生まれる。

 もうひとつは、生涯現役で働くことによって、健康を維持し、社会保障のもう一つの頭痛の種である医療費の増加に歯止めをかけることを狙っている。世耕ペーパーにはこうある。

  • がん検診等の通知に個々人の健康リスクを見える化し、健診受診率を向上
  • 健康スコアリングレポートにより従業員の健康状態を見える化し、経営者の予防・健康づくりを促進
  • 投資家による健康経営へのシグナル(健康経営銘柄への投資を促進)
  • 保険者による生活習慣病や認知症予防のインセンティブ強化
  • 保険者によるヘルスケアポイント導入を促進し、ウェアラブル端末等を活用した個人の予防・健康づくりを支援

 厚生労働省の施策のようだが、経産相の資料である。年間42兆円を突破した医療費を抑制しなければ、財政はますますひっ迫する。

 一方で、高齢者を雇用し続けることを企業に義務付けると、企業自身の生産性が落ちることになりかねない。高齢者が企業に居座ることで、若年者の活躍の場が奪われることになりかねないからだ。

 それを防ぐには、日本型の終身雇用年功序列を抜本的に見直さざるをえなくなる。「中途採用の拡大」の中にも、「職務の明確化とそれに基づく公正な評価・報酬制度の導入拡大」あるいは、「40歳でのセカンドキャリア構築支援」といった施策が並ぶ。

 会議で安倍首相もこう述べている。

 「あわせて新卒一括採用の見直しや中途採用の拡大、労働移動の円滑化といった雇用制度の改革について検討を開始します」

 中西宏明・経団連会長が「就職活動指針」の廃止を打ち出したが、新卒で企業に入れば一生安泰、という制度を維持することはもはや難しくなっている。厳しいようだが、生産性の上がらない社員を抱え続ける余力が企業になくなり、優秀な社員には国際水準並みの高給を払わないと逃げられてしまう時代に突入しつつある。

 安倍首相は早くから規制を阻害している「岩盤」として、農業、医療、雇用制度を挙げて批判してきたが、いよいよ3期目で最大の岩盤ともいえる「日本型雇用制度」に手を付けることになるのだろう。人々の生活に結びついており、既得権を持つ層も少なくないだけに、議論が本格化してくれば、批判の声が上がるに違いない。2019年6月にも閣議決定する成長戦略「未来投資戦略」の中にどれだけ具体的な指針として盛り込み、3年間の行動計画として描けるかが焦点になる。

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