今後の論点は「全世代型社会保障」

 会議に資料として提出された内閣官房日本経済再生総合事務局の「成長戦略の方向性(案)」では、こうした問題意識がつづられている。資料にはこうある。

 「潜在成長率は、労働力人口の高まり等により改善し、また、労働生産性は過去最高を記録しているものの、労働生産性の引上げが持続的な経済成長の実現に向けた最重要」であるとし、(1)AI(人工知能)やロボットの活用による一人ひとりが生み出す付加価値の引き上げ、(2)新陳代謝を含め資源の柔軟な移動を促し、労働生産性を引き上げる、(3)地域に生活基盤産業を残すための地方支援――に力を入れるとした。そのうえで、「アベノミクスの原点に立ち返り、第3の柱である成長戦略の重点分野における具体化を図る」としている。

 こうした方向性を確認したうえで、今後の論点として、「全世代型社会保障への改革」というキャッチフレーズを打ち出した。安倍首相も会見で、「安倍内閣の最大のチャレンジである全世代型社会保障への改革」という言い方をしており、「3本の矢」「1億総活躍社会」「働き方改革」に続く、表看板になりそうだ。

 もっとも、全世代型社会保障という言葉は分かりにくい。いったい何をやろうとしているのか。

 同会議に世耕弘成経済産業相が出した「生涯現役社会の実現に向けた雇用・社会保障の一体改革」という資料が分かりやすい。現在、安倍官邸の経済政策は経産省からの出向者などが中心となってまとめており、世耕氏のペーパーももちろん連動している。

 「生涯現役時代に対応した社会保障制度改革」と「生涯現役時代に対応した雇用制度改革」を並列に並べて、同時に実現していくとしている。

 社会保障改革の柱は「年金改革」と「予防・健康づくり支援」、一方の雇用制度改革は「高齢者雇用の促進」と「中途採用の拡大」だ。つまり、高齢者にいつまでも働いてもらえる雇用制度を整備することで、社会保障制度が抱える年金や健康保険の財政問題を解消していこうというわけだ。

 高齢者雇用の促進では何を考えているのか。経産相の資料には、4つが列記されている。

  • 65歳以上への継続雇用年齢の引上げに向けた検討
  • 高齢者未採用企業への雇用拡大策
  • AI・ロボット等も用いた職場環境整備
  • 介護助手制度の利用拡大

 最も大きいのが継続雇用年齢の引き上げであることは言うまでもない。現在、高年齢者雇用安定法で、定年を迎えても希望すれば65歳まで働ける制度の導入が企業に義務付けられている。定年を65歳まで引き上げたり、定年自体を廃止する選択肢もあるが、多くの企業が定年になった段階で雇用条件を見直して嘱託などとして再雇用する「継続雇用制度」を利用している。希望者全員を継続雇用する義務があるが、条件が合わずに本人が希望しなければ雇用しなくてもよい。

 安倍内閣は来年以降の「成長戦略」の一環として、この65歳という年齢を引き上げようと考えているのだ。政府内には65歳定年引き上げを義務付けたうえで、70歳までの継続雇用とすべきだという意見がある一方で、単純に継続雇用の年齢を65歳までから70歳までにすべきという意見もある。

 世耕氏の資料ではこれと対をなす「年金改革」として、次の2つを掲げている。

  • 年金受給開始年齢の柔軟化
  • 繰下げの選択による年金充実メリットの見える化

 つまり、年金受給開始を選択制にして、65歳になったらすぐにもらうのではなく、働けなくなってからもらうようにする。一方で受給する年齢を先延ばしすれば、その分メリットがあることを分かりやすく見せる、というわけだ。

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