「生涯現役社会」に向けて、シニア層に対する期待は高まる一方(写真:PIXTA)
「生涯現役社会」に向けて、シニア層に対する期待は高まる一方(写真:PIXTA)

労働人口の確保が経済成長の焦点

 安倍晋三首相の自民党総裁としての3期目がスタートし、内閣改造を経て第4次安倍改造内閣が発足した。2012年末に政権を奪還して第2次安倍内閣が発足して6年。アベノミクスは一定の効果を収め、就業者数も雇用者数も過去最高を更新している。果たして安倍首相はアベノミクスの次のステップとして何を行おうとしているのか。

 首相就任後の2013年に打ち出したアベノミクスの第1弾は「3本の矢」だった。(1)大胆な金融緩和、(2)機動的な財政出動、(3)民間需要を喚起する成長戦略――を掲げ、日銀による「異次元緩和」などが行われた。円高だった為替水準が是正された結果、輸出産業を中心に企業業績が大幅に改善、過去最高の利益を上げるに至っている。また、震災復興や国土強靭化を旗印に公共投資も積極化し、建設需要を底上げした。3本目の矢である「成長戦略」については、「遅々として進まない」「期待外れ」といった厳しい評価が聞こえるものの、農業や医療など「岩盤規制」と呼ばれた分野で、曲がりなりにも改革が動き出している。

 2016年に自民党総裁2期目に入ると、アベノミクスの第2弾を打ち出した。「一億総活躍社会」を旗印に、女性活躍促進や高齢者雇用の拡大などを目指した。「働き方改革」が内閣の最大のチャレンジと位置付けられた。

 65歳以上で働いている高齢者が800万人を突破、女性15歳から65歳未満の「就業率」も遂に70%に乗せた。働き方改革の議論では、電通の新入社員の自殺が労災認定された時期と重なったこともあり、「長時間労働の是正」「同一労働同一賃金」に議論の中心が置かれた。

 労働基準法などの改正で、繁忙期の特例でも残業時間を最長で「月100時間未満」とすることが罰則付きで決まるなど、労働者側にとっても画期的な法改正が実現した。これまでは残業時間の上限は労使交渉で合意(サブロク協定)すれば実質的に青天井だった。

 働き方改革の本来の目的は「生産性」の向上にあったが、結果的には女性や高齢者など労働力を増やすことで経済成長につながる構図になった。今後、人手不足が深刻化していく中で、どうやって労働人口を確保していくのかが焦点になっている。

 そんな中で、安倍総裁の3期目がスタートした。さっそく首相が議長を務める「未来投資会議」が10月5日に開かれ、2019年から3年間の「成長戦略」について議論された。

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